2019 Fiscal Year Annual Research Report
Novel treatment strategy targeting key regulators of cancer microenvironment formation
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18H03004
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川野 真太郎 九州大学, 大学病院, 講師 (00398067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清島 保 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20264054)
中村 誠司 九州大学, 歯学研究院, 教授 (60189040)
松原 良太 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (60615798)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 癌微小環境 / key regulator / ΔNp63 / 浸潤 / 転移 / 口腔癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の転移は、浸潤先端部の微小環境における癌細胞の浸潤・遊走、免疫監視機構からの逃避、治療抵抗性など複数の過程を経て成立することが知られている。これまでに我々は、頭頸部癌の浸潤先端部で転写因子ΔNp63の発現が減弱することにより、これらの様々なプロセスが導かれていることを見出した。本研究は、浸潤先端部の微小環境構築のkey regulator としてΔNp63 に焦点をあて、その発現を制御している因子と分子機構を解明することにより癌の転移に必須のプロセスを一網打尽しようとする試みである。前年度の研究結果から、癌の浸潤先端部におけるΔNp63の発現減弱によりサイトケラチン(CK)19とprotease-activated receptor(PAR)1の発現が上昇していることを見出した。また、免疫組織化学的染色方にて、CK19は口腔扁平上皮癌(OSCC)の浸潤先端部で発現が増強しており、CK19陽性症例は陰性症例を比較して5年生存率が低かった。そこで本年度は、癌細胞株を用いて、これらの遺伝子の機能解析を行い、以下の研究結果を得た。 ①ΔNp63発現抑制により、CK19とPAR1の発現が上昇した。②CK19のノックダウンにより、癌の浸潤・遊走能が著明に抑制された。③上皮間葉転換(EMT)形質を示すOSCC細胞株において、PAR1の発現を抑制するとEMT形質が抑制され、上皮細胞の形質を獲得し、浸潤・増殖能が著明に抑制された。④PAR1高発現症例は、低発現群と比較して有意に予後が不良であった。これらのことから、癌の微小環境におけるΔNp63の発現減弱はCK19とPAR1の発現を亢進させ、EMTを介した癌の浸潤・遊走に深く関わることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前の研究により、ΔNp63が癌の浸潤・遊走に関与していることは分かっていたが、その詳細は不明であった。これまでの研究成果により、癌の浸潤先端部の微小環境において、ΔNp63がkey regulator として癌の浸潤・遊走・転移に深く関与していることが徐々に明らかとなってきた。一方、ΔNp63がどのような機序によって発現が抑制されるかについては未だ不明であるが、研究全体としては、概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、ΔNp63が発現減弱することにより、そのCK19やPAR1などの標的遺伝子の発現が亢進し、癌の浸潤・遊走・転移に関与していることが明らかとなった。しかしながら、ΔNp63の発現を制御している因子を同定し、その機能解析を行うとともにΔNp63の発現制御機能についても解明する予定である。本研究で問題となる可能性が最も高いのは、責任遺伝子を同定できないことである。その場合は、近年注目されているmicroRNA や細胞外小胞体(exosome)に焦点を変え、ΔNp63の発現を制御している因子を探索する予定である。また、本年度の研究により、ΔNp63の標的遺伝子として新たに見出した2つの遺伝子については、OSCC細胞株を用いてさらなる機能解析を進める予定である。さらに可能であれば、これまでに我々が同定し得た各遺伝子間の相互作用についても検討したいと考えている。
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