2018 Fiscal Year Annual Research Report
スカトールを介した高動物性タンパク質摂取による消化管恒常性の破綻・回復機構の解析
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18H03178
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
清水 英寿 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (10547532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 敏 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (00271627)
吹谷 智 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10370157)
吉清 恵介 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (30510739)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞死 / 脂質代謝 / PPARα / AhR / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
食の欧米化に伴い、タンパク質の摂取量だけでなく、摂取タンパク源にも変化が生じている。農林水産省の食糧需給表によると、平成23年度を境に摂取タンパク源が、魚類を肉類が上回っている。スカトールは、高食肉摂取により腸内で産生されるが、その作用については未だ不明な点が多い。そこで本研究では、腸管および肝臓に着目して、スカトールが与える影響について解析を行った。 腸管に関しては、スカトールは培養腸管細胞で発現しているAhRを介する経路だけでなく、AhR非依存的な経路も活性化することで細胞死を導いた。この細胞死の一部は、アポトーシスであることが示唆された。 肝臓に関しては、肝細胞に対するスカトール処理により、時間および濃度依存的にPPARαの発現増加が観察された。5週齢の雄性SDラットに基本飼料を与えたコントロール群とスカトール摂取群の2群について6週間飼育を行ったところ、特に顕著な変化は観察されなかった。そこで、コントロール群とスカトール摂取群における血漿トリアシルグリセロール値と肝臓でのPPARαの発現量について相関関係を検証したところ、コントロール群では相関関係が存在しなかった一方で、スカトール摂取群では有意な負の相関関係が確認された。よって、腸内で産生され体内に吸収されたスカトールは、肝臓のPPARαの発現増加を介して血漿トリアシルグリセロール値の低下に寄与する可能性が示唆された。 以上のように、未解明な点が非常に多い高食肉摂取を食習慣とした場合の健康促進効果と病態発症効果の違いを生み出す分岐点に、腸内でのスカトールの産生が影響を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、論文が1報、受理された。また、現在までに得ている成果をまとめ、論文を投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管細胞に関しては、スカトールの作用メカニズムの詳細について、さらなる検討を行う。また、スカトールによって導かれた細胞死にTNFαなどの炎症性サイトカインが関与しているのか、関与しているのであれば、どのような作用経路によって発現が誘導されているのか解析を行っていく。 肝細胞に関しては、スカトールがトリアシルグリセロール代謝に影響を与えることが明らかとなったため、その作用メカニズムの詳細について解析を進めていく。
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Research Products
(5 results)