2019 Fiscal Year Annual Research Report
スカトールを介した高動物性タンパク質摂取による消化管恒常性の破綻・回復機構の解析
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18H03178
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
清水 英寿 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (10547532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 敏 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00271627)
吹谷 智 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10370157)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
吉清 恵介 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (30510739)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TNFα / TNFR1 / IL-6 / COX-2 / NF-κB |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、これまでに培養腸管細胞に対して機能が未解明であったスカトールが、細胞死を導く作用メカニズムを明らかにすることに焦点を当てた。スカトールによって活性化されるMAPキナーゼファミリーのERK、p38、JNK、そしてスカトールの受容体であるAhRのうち、p38の活性化を介して、TNFαおよびその受容体であるTNFR1の発現増加が導かれた。そこで、TNFαに対する中和抗体およびTNFR1のアンタゴニストを培養腸管細胞に処理したところ、スカトールによって導かれる細胞死が一部抑制された。さらにスカトールは、p38の活性化を介してIL-6とCOX-2の発現増加も導くことを確認した。以上から、高食肉摂取を起因とする炎症性腸疾患や大腸癌の発症・進展に、腸内細菌代謝産物であるスカトールが関与する可能性が示された。 培養肝細胞に対するスカトールの効果として、NF-κBのタンパク量増加を導くことを新たに確認した。NF-κBは種々のサイトカインの発現誘導に対して中心的な役割を担っている転写因子であることから、スカトールは肝細胞における炎症反応の亢進に寄与することが示唆された。 スカトールは腸内細菌による代謝を介してインドール酢酸から産生されるため、スカトールとインドール酢酸の作用効果の違いについても検討を試みた。健常ラットにインドール酢酸含有食を摂取させたところ、活動期における血糖値上昇が抑えられた。また、当研究グループより開発された胆汁酸誘導性脂肪肝発症モデルラットを用いてインドール酢酸の効果を調べたところ、インドール酢酸含有食摂取ラットにおいて肝臓での脂質蓄積が一部抑制された。以上から、インドール酢酸とその代謝産物であるスカトールは、臓器機能に対して異なる作用を有していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養腸管細胞に対して、これまでにスカトールの受容体として報告されているAhRだけでなく、他の受容体を介した新規作用メカニズムで炎症反応が惹起される可能性を示しただけでなく、その候補分子も見出せる可能性が得られた。培養肝細胞においては、スカトールはPPARαの発現増加を導くことを当研究グループでは見出しているが、本年度ではNF-κBのタンパク量も増加させることを新たに確認した。これらの結果から、肝細胞に対する高食肉摂取による功罪がスカトールを起点に明らかにできる可能性を見出した。さらに、スカトールの前駆体であるインドール酢酸の効果も調べることで、腸内細菌の代謝過程で生じる代謝産物の作用効果の違いを明らかにした。以上から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
培養腸管細胞および培養肝細胞を用いて、スカトールの新規作用メカニズムのさらなる解析を進めていく。合わせて、スカトール摂取ラットにおいても、培養細胞で得られた結果と同様のの作用メカニズムが存在するのか確認を行っていく。また、スカトールの前駆体であるインドール酢酸の作用メカニズムも解析することで、スカトールとの作用効果の違いを明らかにしていく。
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Research Products
(5 results)