2019 Fiscal Year Annual Research Report
Institutional design of a new environmental tax based on the assumption of external capital investment in rural and mountainous areas
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18H03447
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
山下 良平 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40515871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 英嗣 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00632598)
岸岡 智也 金沢大学, 地域連携推進センター, 連携研究員 (10793028)
東口 阿希子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特任助教 (90804188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中山間地域 / 外部資本投資 / 環境税 / 社会調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はの1つ目の成果は、本研究の一環として計画していた環境資源量や地域経済水準と地域活性化意向の相互関連に関する全国調査を実施した。中山間地域に進む外部資本投資を踏まえた環境税による地域ガバナンスの形成には、環境税の使途対象となる資源量やそれらの恩恵(生態系サービス)に基づく地域経済水準と、地域住民の活性化貢献動機の連関の解明が不可欠である。当該年度の一連の研究では、全国を対象に10000サンプルを超える大規模調査に成功し、財政指標に基づく地域経済状況の評価と地域住民の環境保全意識の相互連関を統計的に分析し、今日の地方活性化事業への投資の減衰が地域の自然資源の衰退を間接的に規定している可能性を指摘した。 2つ目は、管理が粗雑になる場合に、地域と調査しない土地利用及び土地取得が行われるリスクが高い、沿岸部やため池など親水区域の維持管理に関する多主体連携の方策に関する分析を行った。得られた結果は、地域外部者の貢献意思水準(金額ベース、労働時間ベース)や、地域独自の取り組み実態であった。特に前者は、単発の事業や企画ではなく、着地型観光を含めた事業を企画することによって、石川県の沿岸地域での環境活動に対して、費用負担が無い場合でも数年に1回の訪問意向があるという結果であった(関東から関西までの地域で有意差無し)。 3つ目は、全ての個別課題に共通する問題である、中山間地域のコミュニティ自体の衰退傾向を踏まえた、現実的な維持活性化方策に関する事例的調査分析を行った。得られた結果は、地域活動から公教育における環境教育の実践に至るまで、SDGs時代の過疎地域の持続可能なマネジメントのあり方に関する実体的な知見であった。特に前者は、ベトナムの事例との比較も行い、日本の環境教育の固有性を確認した。 これらの研究成果の一部は本年度内に関係学協会にて成果報告され、論文化されているものを含む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年は、特に地方部の衰退によって地域活性化への積極的な動機が停滞している可能性が危惧されており、環境税への肯定的態度や協力が浸透しない可能性も否定できない。中山間地域における持続可能な環境ガバナンスを形成するためには、現状の精緻な理解が重要となり、1つ目の成果はまさにこの課題に直結するものであった。財政状況や公共投資、そして住民の主観的な情報をリンクさせた研究は稀有であり、本研究の分析結果の新規性は大いに期待されるところである。 2つ目の成果に挙げた沿岸部やため池の管理についての研究は、人間の生活空間の際として管理不備になりやすい領域を事例にしたものであり、現場に有用な知見を見いだした。3つ目の成果に挙げたコミュニティ研究は、言うまでも無く地域を担う受け皿の持続可能性を高めるための課題を同定するものであり、継続的に進めることが求められる。しかも、地域資源の担い手として多数を占める地元の高齢者層だけではなく、共同活動や教育を通じて若年層への意識喚起を研究対象とした点は、今後中長期的な視点で地域への成果還元が期待される。 初年度からの成果と併せて、本研究を通して極めて重要な知見を含む多くの情報が大規模調査から得られた。特に、小地域レベルの詳細な実態調査から広域レベルの大規模社会調査までを包含するため、環境税に基づく環境意識の醸成からガバナンスの形成に至る新たな社会づくりに対して貢献しうる、基礎的な学術的基盤となることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,これまでの調査分析の流れを踏まえて、継続調査と結果の分析に基づく成果公表を進める。また、環境税による環境計画への貢献とその意義に関する具体的な考察を深める。COVID-19の影響による移動制約が生じることが予想されるが、多様な情報収集手段を活用してデータ収集が途切れないよう尽力する。
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Research Products
(10 results)