2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of immunostimulatory mRNA and lymphoid tissue-targeting carriers for cancer vaccine
Project/Area Number |
18H03529
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 智士 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (20710726)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
弓場 英司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80582296)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | mRNAワクチン / がんワクチン / 脂質性ナノ粒子 / 2本鎖mRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
メッセンジャーRNA (mRNA)を用いたがんワクチンは、患者毎に異なるネオ抗原を標的とした設計が容易であり、かつ抗がん免疫を得る上で重要な細胞性免疫を得られるといった特長を持つ。一方で、ワクチンには、抗原とともに、免疫賦活化のためのアジュバントの投与が必要となるが、mRNAワクチンに適したアジュバントの開発は行われてこなかった。 まず、本研究では、mRNAに2本鎖RNA構造を組み込むことで、アジュバント機能を組み込んだmRNAを開発するが、この設計は安全性が高く、さらに抗原提示細胞に抗原とアジュバント共送達できるといった利点を持つ。従来我々が開発したシステムでは、mRNAに2本鎖構造を付与した結果、その翻訳活性が若干低下した。本年度の研究で、2本鎖構造を再設計した結果、翻訳活性を損なわず、高い免疫賦活化作用を示すmRNA構造見いだすことに成功した。さらに、mRNA導入により惹起される炎症反応の強度を制御することにも新たに成功したが、この点は、ワクチン効果を得るのに必要十分な強度の免疫賦活化作用を得ることで、安全かつ効果的にmRNAワクチンを投与する上で極めて重要である。 また、mRNAワクチンでは、脾臓やリンパ節といった免疫組織にmRNAを効率的に送達することが必要となるが、そのためには輸送担体に免疫組織指向性のリガンドを組み込むとともに、標的組織への送達前のmRNA酵素分解を防ぐことが必要である。本年度の研究で、2本鎖RNA構造を組み込む際に用いた方法論を、mRNA輸送担体の安定化に展開することで、生体内でのmRNA酵素分解耐性の飛躍的向上に成功した。 以上のように、mRNAワクチンに必要な、mRNA設計、及び輸送担体設計において、優れた成果を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な課題は、mRNAの翻訳活性を維持したまま、高い免疫賦活化能を有する2本鎖mRNAを設計することであった。上述のように、従来我々が開発した2本鎖mRNA設計と比べ、高い免疫賦活化作用を有し、さらにmRNAの翻訳活性を維持できる構造を見出すことに成功した。このことから、計画していた課題は、十分に遂行できていると言える。 それに加え、mRNA導入により惹起される炎症反応の強度を制御することにも新たに成功したが、この点は、安全かつ効果的にmRNAワクチンを投与する上で極めて重要である。また、mRNAワクチン設計の際に、免疫賦活化作用を付与するために用いた方法論を、mRNA輸送担体の安定化に展開することで、生体内でのmRNA酵素分解耐性の飛躍的向上にも成功した。この点は、mRNA分解を防ぎ、標的組織へ効率的にmRNAを送達する上で重要である。これらのような計画以上に優れた想定外の成果を得ることにも成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、(課題1) 優れた免疫賦活化作用と、mRNAからのタンパク質翻訳活性を両立できるような2本鎖mRNAワクチンを設計すること、(課題2) その2本鎖mRNAを免疫組織に効果的に送達するためのmRNA輸送担体を設計することが必要となる。 (課題1)に対して、今年度までに、2本鎖構造を再設計した結果、翻訳活性を損なわず、高い免疫賦活化作用を示すmRNA構造を見出した。その際、免疫系の培養細胞を用いた検討が主であったため、今後、マウスを用いた生体内機能評価に取り組む。また、2本鎖RNA鎖長等の構造最適化を継続することで更なる機能向上を目指す。 (課題2)に関して、免疫組織へのmRNAの送達には、輸送担体に免疫組織指向性を付与するだけでなく、標的組織への送達前のmRNA酵素分解を防ぐことが非常に重要である。上述のように、本年度もこの点に関して優れた進捗を得ることができたが、生体内でのmRNAの酵素分解活性は非常に強く、今後もさらなる輸送担体開発に取り組む。さらに、輸送担体の体内動態を制御し、免疫組織に選択的に送達させるための開発にも取り組む。 さらに、上述の新規mRNA構造を新たに設計した送達キャリア搭載することで、ワクチンへ応用する。まず、モデル抗原を発現するmRNAをマウスへ導入し、抗原特異的な細胞性免疫や液性免疫を評価する。そこで得られた結果は、適宜mRNAや輸送担体の設計にフィードバックさせ、新たなmRNAワクチン設計に活かす。これらの研究により、次年度以降、がんワクチン研究を遂行する上での礎を築くことができることができる。
|
Research Products
(12 results)