2019 Fiscal Year Annual Research Report
悪性脳腫瘍の選択的な可視化と治療を実現する近赤外光セラノスティクスナノ粒子
Project/Area Number |
18H03538
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
上村 真生 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 講師 (80706888)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近赤外 / セラノスティクス / ナノ粒子 / 高分子 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性脳腫瘍は、脳内深部に浸潤したがん細胞の観察が難しく、脳自体が極めて重要な器官であるために腫瘍の外科的切除にも限界があるため、完全な治癒が困難であることが深刻な問題となっている。そこで本研究では、非侵襲的に体内深部まで到達可能な近赤外(NIR)光を用いて、悪性脳腫瘍のみの選択的な治療(光操作)と診断を同時に行うことができる「セラノスティクス」技術を、世界で初めて創出することを目的としている。具体的には、新規に開発する「高分子修飾NIRセラノスティクスナノ粒子」を用いて、「悪性脳腫瘍のみに選択的に結合」し、NIR蛍光による「脳内深部のがん細胞のリアルタイムな可視化」と NIR光刺激(光操作)に応答した「腫瘍の治療」を行うことに取り組んでいる。 今年度は、前年度に合成した希土類イオン含有セラミックスナノ粒子をベースとした光線力学療法用デバイスを用いて培養したがん細胞に対する制がん活性と、担がんマウスを用いたin vivo実験を進めた。この結果、培養細胞および担がんマウスを用いた両方の実験において、効果的にがん治療が可能であることが明らかになった。 NIR光のみを照射した場合には細胞やマウスにはほとんどダメージが無いが、開発したデバイスを投与し、NIR光を照射した場合にのみ、効果的な治療効果が表れることが観察された。次年度は、今年度に得られたナノ複合体に、さらに温熱治療が可能な機能を付与することで、より効果的ながん治療デバイスの構築に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年度に作製した、希土類イオン含有NaYF4ナノ粒子にポリエチレングリコール (PEG)と光増感剤を導入したデバイスを用いて、実際に近赤外光照射下で活性酸素を発生することで培養したがん細胞と担がんマウスに対する制がん活性を確認することができた。このため、今年度に得られたナノ粒子は、NIR光セラノスティクスに利用できる性質を十分に有していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり、光増感剤を希土類含有セラミックスナノ粒子に導入し、光線力学療法によって制がん活性を有するデバイスの開発に成功した。今後は、さらに光温熱効果を利用可能な材料設計を進め、より効果的ながん治療デバイスの創出に取り組む。
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