2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Natural and the Supernatural in Comparative Perspective
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18H03573
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
山中 由里子 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 教授 (20251390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 由布 同志社大学, 文学部, 教授 (10546667)
黒川 正剛 太成学院大学, 人間学部, 教授 (30342231)
小松 和彦 国際日本文化研究センター, 大学共同利用機関等の部局等, 名誉教授 (90111781)
佐々木 聡 金沢学院大学, 文学部, 講師 (60704963)
野元 晋 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (10276420)
林 則仁 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (20738215)
安井 眞奈美 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (40309513)
山田 仁史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90422071) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 驚異 / 怪異 / 想像界 / 自然観 / 超常認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、コロナ感染症拡大のため、予定していた国内外調査がほとんどできなかったが、国内での成果展示、および今後の国際発信に向けての勉強会を行い、主としてユーラシア大陸の東西の文明圏において、「自然」と「超自然」、もしくは「この世」と「あの世」の境界に立ち現れる身体・音・モノが、伝承・史料・民族資料・美術品などにどのように表象されているかを考察した。 具体的には、兵庫県立歴史博物館において、特別展「驚異と怪異――モンスターたちは語る」を開催し、ヨーロッパや中東において、不可思議ではあるが実在するかもしれず自然に関する知識の一部として伝えられた犬頭人、一角獣といった「驚異」と、東アジアにおいて、流星や異形の生き物の誕生など、天や神仏からの警告であると捉えられた、通常とは異なる現象「怪異」の比較研究を、展示の形で公開した。本展では人魚、竜、怪鳥、一角獣など、さまざまな世界の想像上の生き物の境界的な「生態系」を紹介するとともに、特に警告・凶兆(モンストルム)を語源とする怪物(モンスター)の文化史的な意味に注目した。兵庫県立歴史博物館学芸員の香川雅信氏の先験的キュレーションによって展示されていたアマビエなどの「予言獣」が、コロナ禍によって一層の注目を浴びることとなり、疫病とモンスター表象の関係性についても考察をうながす展示となった。さらに、分担者の佐々木聡が、特別展「東アジア恠異学会20周年記念展示 吉兆と魔除け―怪異学の視点から」(2021年2月24日~4月14日、京都産業ギャラリー)の企画に関わり、祥瑞災異思想に関わる解説を担当した。 また、2019年に刊行した日本語の成果論集『この世のキワ―<自然>の内と外』の英訳作業を進め、特に漢語や日本語の概念を英語に置き換える際の、概念の意味範囲のズレの問題について、オンライン勉強会を開き、踏み込んだ議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開幕時期は延期になったものの、国内における成果公開のための展示は無事行うことができた。コロナ禍によって、国内外の現地調査や海外研究者を招いての対面シンポジウムは難しい状況になったが、疫病という人間がコントロールできない目に見えない力とモンスター表象の拡がりの関係性について、リアルタイムで考察できたことは、大変意義深い。 今後の国際発信のための英訳作業を行い、用語の妥当性についての綿密な議論を、オンライン勉強会で進めることができた。 非常に残念なことに分担者の山田仁史氏が急逝された。海外の学会でも活躍し国際経験豊かで、比較神話学の大きな視野からユーラシア全体を捉えることができた山田氏には、英語での成果論集への貢献も期待していただけに、大きなロスである。
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Strategy for Future Research Activity |
メンバー各自がオンラインリソースやリモート発注などのシステムを利用したり、旅行が可能な範囲で国内外の文献、伝承、美術品、民族資料などの調査を行い、集めた関連データや資料を集積する。様々な文化圏・時代の驚異・怪異観念を相互比較する研究会をオンラインで開催する。2019年に開催した国際ワークショップや、日本語で刊行した論集の内容を踏まえ、英文の論集の準備を進める。 高知県立歴史民俗資料館において特別展示を開催し、超自然的なものをめぐる人間の想像力の働きを理解するうえで最も効果的な視覚化を通して、研究成果の社会的な還元を行う予定である。 これらの活動を通して、人間の想像力と自然環境の関係性についてさらに考察を深める。
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Research Products
(24 results)