2018 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics and Knowledge and Cultural Memory in the Ancient Mediterranean World
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18H03587
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
周藤 芳幸 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70252202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金山 弥平 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (00192542)
長田 年弘 筑波大学, 芸術系, 教授 (10294472)
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
高橋 亮介 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10708647)
田澤 恵子 (財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (30598587)
佐藤 昇 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (50548667)
大林 京子 (山花京子) 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (50594157)
田中 創 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50647906)
藤井 崇 関西学院大学, 文学部, 准教授 (50708683)
安川 晴基 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (60581139)
芳賀 京子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80421840)
中野 智章 中部大学, 国際関係学部, 教授 (90469627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地中海 / 知の動態 / 文化的記憶 / 文字 / 図像 / 口承 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前プロジェクト「古代地中海世界における知の伝達の諸形態」の最終年度に当たっており、そこで既に策定されていた研究計画を着実に進めるとともに、現プロジェクト「古代地中海世界における知の動態と文化的記憶」の本格的な展開に向けて新たな模索を行った。具体的には、図像による知の伝達の諸相を明らかにするために、図像班を中心に研究会「死者を記念する―古代ギリシアの葬礼制度と美術に関する研究」を開催し、陶器画による情報の伝達について多方面からの共同研究を行った。また、9月3日から7日にかけて、国外の大学や研究機関から古代地中海文化研究の最先端で活躍している13名の研究者を招聘し、そこに本共同研究のメンバーのほぼ全員が参加する形で、第4回日欧古代地中海世界コロキアム「古代地中海世界における知の伝達と組織化」を名古屋大学で開催した。このコロキアムでは、古代ギリシアの歴史家の情報源、情報を記録する数字の表記法、文字の使用と記憶との関係、会計記録の宗教上の意義、法知識や公会議記録の伝承のメカニズム、異文化間の知識の伝達を通じた集団アイデンティティの形成、神殿などのモニュメントを通じた植民市と母市との間の伝達など、古代地中海世界で観察される知の動態をめぐる様々な問題が議論されたが、そこからは、新プロジェクトの課題に関して豊富なアイディアと示唆を得ることができた。これについては、その成果の出版計画の中でさらに検討を重ね、今後の研究の展開にあたって参考にする予定である。これに加えて、当該年度には、知の伝承に関する基礎データを獲得するためにエジプトでフィールドワークを行ったほか、9月にはダラム大学名誉教授のピーター・ローズ博士、年度末にはオックスフォード大学のニコラス・パーセル教授の講演会を企画・開催するなど、国際的なネットワークの強化にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度における共同研究の最大の成果は、第4回日欧古代地中海世界コロキアム「古代地中海世界における知の伝達と組織化」を、ほぼ当初計画通りに開催できたことである。限られた事務支援体制のもとで、招聘研究者の来日日程の調整などの実務は煩雑をきわめ、かなり早くから準備に着手したにもかかわらず、予稿集の編集作業などは予定していたスケジュールよりも遅れがちであった。それにもかかわらず、最終的には5日間のコロキアムを充実した内容で開催することができたのは、ひとえに以前から交流のあったオックスフォード大学のキャシー・モーガン教授やウィーン大学のマリオン・マイヤー教授、及び研究分担者全員の献身的な協力のおかげである。当該年度が前プロジェクトの最終年度に当たっていたことから、既に策定されていた申請研究計画の推進に力を入れた分、新たに取り組むことになった文化的記憶の問題に関しては必ずしも十分な成果を上げることができなかったが、これは新年度以降の課題として、長期的な視野に立って取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は、紀元前8世紀から紀元後5世紀まで地中海を舞台に高度な古代文明が存続し、その後の人類の歴史に大きな影響を与えることになる文化が創造された理由を、「文化的記憶」をめぐる知の動態に着目することで解明することを目標に策定したものであるが、この方向が基本的に正しく、国際的な研究動向に照らしてきわめて高い意義を有していることは、当該年度に開催した国際コロキアムを通じて十分に確認することができた。そのため、基本的な研究の方向は維持しつつ、今後は口承班、文字班、図像班内部における研究分担者相互の連携をより強固かつ実質的なものにする方向で、共同研究を推進していきたい。というのも、これまでの活動実践からは、ギリシア、ローマ、エジプトという研究対象地域の相違は、単に空間的なものにとどまるものではなく、予想以上に深くアカデミアの制度に深く根差しており、容易には克服しがたいという事実が判明している。しかし、それぞれの領域における研究者の絶対数が少ない我が国においては、そのようなディシプリンの壁を越えた連携以外に、国際学界で優位を占める道がないことは自明の理であろう。そのため、2022年度にアテネでの開催を予定している次回の国際コロキアムに向けて、今後は「文化的記憶」への理解をより深めるとともに、ディシプリンを架橋する共同研究体制の強化を進めていく。
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Research Products
(29 results)