2020 Fiscal Year Annual Research Report
伊能図の成立過程に関する学際的研究-忠敬没後200年目の地図学史的検証-
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18H03603
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
平井 松午 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 非常勤講師 (20156631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 宏夫 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 大学共同利用機関等の部局等, 理事 (00167222)
鳴海 邦匡 甲南大学, 文学部, 教授 (00420414)
杉本 史子 (山田史子) 東京大学, 史料編纂所, 教授 (10187669)
島津 美子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10523756)
早川 泰弘 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, センター長 (20290869)
酒井 一輔 聖心女子大学, 現代教養学部, 講師 (30823794)
小田 匡保 駒澤大学, 文学部, 教授 (70224243)
小野寺 淳 茨城大学, 教育学部, 教授 (90204263)
佐藤 賢一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90323873)
塚本 章宏 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (90608712)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 伊能図 / 伊能忠敬 / 非破壊調査 / 高精細画像データ / 地図学史 / 学際的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
伊能忠敬(1745-1818)の業績や日本図に関する研究報告は数多いが、最終版伊能図とされる文政4年(1821)の「大日本沿海輿地全図」完成以前に、忠敬が直接作製に携わった測量下図・定稿図と大名家献上本伊能図との関係や、現在各地に残る伊能図(副本・写本類)の地図仕立てについてはほとんど検証されていない。 伊能図は極めて高度な技法で作製されていることから、本研究課題では、大名家献上本伊能図や測量下図・定稿図等の料紙・彩色・針孔(針穴)・記載内容を、超高精細画像データや非破壊調査などの最新技術を用いて科学的に検証し、伊能図の作製・編集過程を明らかにするとともに、すでに原本が失われている「大日本沿海輿地全図」の実像に迫る。併せて、近年解明が進む長久保赤水・シーボルト研究の成果の下に忠敬収集絵図や諸記録についても分析し、日本地図学史上で最も特出した「伊能図」の学術的意義について再検証することにある。そのため、本科研の遂行に際しては、古地図・絵図研究やGIS解析、絵図・絵画等の科学分析に精通した、専門分野の異なる共同研究者による学際的な研究アプローチをとっている。 2020年度については引き続き、宮城県図書館において伊能図(写本)の共同調査(10月実施)を行うとともに、料紙・彩色・針穴などの解析に耐えうる伊能図の超高精細画像データを作成した。さらに、伊能忠敬記念館には国宝に一括指定されている定稿図・測量下図などの地図類や大量の記録・文書のほか、伊能忠敬が収集した各種の地図・絵図が所蔵されていることから、これらの文書・絵図類の分析を進めることで、「伊能図」成立過程の全容解明に努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年2月以降の新型コロナ感染拡大の影響により、全国各地の関係機関に所蔵されている伊能図原本調査の実施が困難となり、研究計画の遂行に大きな支障を生じたものの、この間、前年度の2019年12月に分割撮影した伊能忠敬記念館所蔵地図・下図の高精細統合画像データを作成し、調査済みの収集データと合わせて伊能図の解析を進めることができた。 コロナ感染がやや収まった2020年10月22日には、科研メンバー10名が参加して宮城県図書館(仙台市)所蔵伊能中図の原本調査を行った。翌23日には、同地においてオンライン方式を交えて研究集会(13名参加)を実施し、料紙・彩色などに関する報告・意見交換を行った。なお、2021年3月には、最終版伊能図である東京大学理学研究科地球惑星科学専攻所蔵伊能中図の原本調査等を予定していたが、新型コロナ感染が収まらないことから2021年度実施に延期(繰越)とした。 以上のように、新型コロナの影響で、当初の調査計画の変更を余儀なくされたものの、高精細画像データの作成や調査データの解析などについては比較的順調に進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、2021年度については前年度(2020年度)に引き続き、複数機関に所蔵される最終版伊能図(文政4年・1821)ならびに関連地図・下図の原本調査を予定しているが、調査については新型コロナの感染状況を踏まえての実施となる。そのため、2021年度については、画像統合が済んでいない伊能忠敬記念館所蔵の地図・下図の分割撮影データについて統合画像の作成を進め、科研メンバー間で情報を共有するとともに、これまでの調査データの整理・解析と伊能図科研報告書のとりまとめを重点的に推進する。 さらに、2021年には、最終版伊能図となる幕府上呈本「大日本沿海輿地全図」(大図214舗、中図8舗、小図3舗)が完成200年を迎えることから、7月10日~8月29日に神戸市立博物館で開催予定の特別展「伊能忠敬」、同特別展に関連して実施予定の神戸市立博物館・伊能忠敬記念館(香取市)共催の記念シンポジウムに伊能図科研メンバーが参加の予定である。これらの取組は、本研究が掲げる社会貢献の一環でもある。併せて、伊能図科研の研究集会の開催も予定している。 また、2021年度は当科研の最終年度となることから、これまでの調査研究成果について報告書の刊行を予定している。さらに、2022年3月に開催予定の日本地理学会春季学術大会において、伊能図科研のシンポジウムを開催し、成果報告を行う計画である。
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Research Products
(6 results)