2018 Fiscal Year Annual Research Report
Impact evaluation of Universal health coverage project
Project/Area Number |
18H03634
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 主光 一橋大学, 社会科学高等研究院, 教授 (50313458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 良太 一橋大学, 社会科学高等研究院, 准教授 (00717209)
金子 能宏 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (30224611)
真野 裕吉 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40467064)
井伊 雅子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50272787)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ / インパクト評価 / セネガル / 共済組合 / ガバナンス / UHC / グローバル・ヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本政府・JICAによる、セネガル共和国に対するUHC (Universal Health Coverage) 援助事業の効果を定量評価することを目的としている。成果の定量化は我が国における援助事業のあり方に重要な示唆を与える。近年、途上国を中心としてUHC達成に向けて公的医療の財源拡大が進められているが、予算を増やすことが医療支出による家計破たんの解消や健康水準の向上に繋がっているのかどうかは定かではない。すなわちUHC拡充政策が家計破たんや国民健康水準に与える効果の分析が政策上の課題となっている。 セネガル国民の8割を占めるインフォーマル・セクターは、各市町村に設置されたコミュニティ共済保険に加入することになっているが、研究開始時の加入率は1割程度にとどまる。コミュニティ共済保険組合(以後、共済保険組合)の導入課題として保険業務機能強化が挙げられる。加入者の募集とその登録、保険料徴収医療機関と契約帳簿管理の登録、医療機関 からの診療報酬請求の審査・支払い等、基本的な保険手続きがすべての共済組合で機能されなければならない。UHC援助事業の一環として、2018年に共済保険組合の業務機能強化のための技術支援が行われた。 本研究ではセネガル三州で技術支援の対象となった県(介入群)と対象にならない県(対照群)との間での共済組合のパフォーマンス、従業者数、保険加入者数、契約先医療機関数や診療報酬支払期間等の比較分析によってUHC援助事業のインパクトを評価する。2018年度は、2017年度に行った共済組合調査(事前調査)について記述統計的分析を行った。また、2018年12月から2019年1月にかけて、三州の1700世帯を対象に世界銀行と協働して家計調査を行い、データを収集した。家計調査にかかる、調査方法の指導、実施管理のため、研究分担者が現地に赴いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、佐藤(研究代表者)が全体調整、中村・真野(研究分担者)が調査計画策定・調査実施・分析、井伊・金子(研究分担者)が医療経済学の観点からの助言を行うという研究体制のもと、ベースライン調査の一部分析とデータ収集を行った。 2017年度に実施した共済組合調査で得られたデータについて、非常勤研究員を雇用して、中村・真野の指示の元で記述統計的分析を行った。政府・JICAによる技術支援は、事前に選ばれた三州(ティエス、ジュルベル、タンバクンダ)の計10県から3県を対象としているが、共済組合調査は、これら三州の全ての共済組合に対して、従業者数、保険加入者数、契約先医療機関数や診療報酬支払いに掛かる期間、保険業務の知識の有無等について調査している。2018年度中に行った記述統計的分析の結果については、当初予定通り、JICAおよびセネガル政府に報告書を提出することができた。 家計調査については、世界銀行と連携して2018年度中に調査を行い、上述の三州から約1,700件のサンプルを取った。この家計調査では主に各家計の医療支出、具体的には過去12か月の入院費・過去3か月の薬剤費等や保険加入状況といった指標の他、医療サービス利用や既往歴などの健康水準に関する情報を集めた。 家計調査は、当初、2018年夏に予定されていたが、世界銀行での調査項目確定などに時間がかかり、実際には、2018年12月から2019年1月にかけて実施された。このため、2018年度に計画していた、家計調査の結果の分析および共済組合調査と家計調査をマッチングさせたデータの分析は、2019年度から行うこととなった。ポスドク研究員を雇用することで、分析等を加速し、論文の作成に取り掛かる。また、この実証分析の結果については、JICAおよびセネガル政府に対して報告を行い、さらに学会発表やセミナー/国際会議での報告を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
家計調査および共済組合調査はUHC援助事業後の2021年に再び実施する(事後調査:介入後データ)。セネガル三州で技術支援の対象となった県(介入群)と対象にならない県(対照群)との間での共済組合のパフォーマンス、従業者数、保険加入者数、契約先医療機関数や診療報酬支払いに掛かる期間、保険業務の知識の有無等の2017年の調査結果との比較分析、家計の医療支出(入院費・薬剤費など)や保険加入状況、医療サービス利用や既往歴などの健康水準に関する結果を2018年の調査結果と比較分析、さらに共済組合調査と家計調査をマッチングさせたデータの分析との比較分析によってUHC援助事業のインパクトを評価する。 2019年度中は、介入前データの分析、論文執筆、中間報告を行う。また、事後調査に向けた調整を開始する。このため、前年度の非常勤研究員に代えてポスドク研究員を雇用する。また、中間報告および事後調査に向けた現地政府との折衝・調整のため、研究分担者1名が現地に赴く。 2020年度は、事後調査(家計調査および共済組合調査)の調査計画を策定する。実際に現地で調査員が用いる質問票(タブレットにインストール)を作成するため、アプリケーションを購入する。また、現地政府との折衝・調整のため、研究分担者1名が現地に赴く。 2021年度は、世界銀行と協働して調査を実施し、さらに、三州の全ての共済組合を対象とした共済組合調査を実施し、データの収集を行う。調査方法の指導、実施管理のため研究分担者1名が現地に出張する。収集したデータの記述統計的な分析を開始する。 最終年度となる2022年には、家計調査・共済組合調査のデータ分析および両方の調査の結果をマッチングさせたデータの分析を行った上で、事前調査の結果との比較分析を行う。結果を成果報告書としてまとめて、現地に赴きJICA・セネガル政府に報告し、論文作成に着手する。
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Research Products
(2 results)