2020 Fiscal Year Annual Research Report
Impact evaluation of Universal health coverage project
Project/Area Number |
18H03634
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 主光 一橋大学, 社会科学高等研究院, 教授 (50313458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 良太 一橋大学, 社会科学高等研究院, 准教授 (00717209)
真野 裕吉 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40467064)
井伊 雅子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50272787)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ / 共済組合 / インパクト評価 / セネガル / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、2018年度に実施した、三州の1700世帯を対象とした家計調査に続き、セネガル国家医療保障庁及びJICAと共同で共済組合の調査(二回目)を行った。2020年3月にセネガルにて準備会議および調査のプレテストの結果に基づき質問票の改訂を進め、同年10月には全てのデータ収集を終えることができた。セネガルにおいてJICAが支援対象としている三州(ティエス、ジュルベル、タンバクンダ)における共済組合のパフォーマンス、従業者数、保険加入者数、契約先医療機関数や診療報酬支払期間等の比較分析によって同国国家医療保障庁のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)事業を評価した。
現地調査やデータ分析の結果、前回調査と比べて特に施設面(机、椅子等の家具、PC等の設備)が改善したことが分かった。これはJICAの支援が入った県ほど顕著な変化が認められた。共済組合職員を対象とした運営訓練の受講率が有意に上がったこともわかった。運営能力面での改善に伴って、とくに運営状況が厳しい状況にあったタンバクンダ州において四半期活動レポートの提出率が顕著に上昇した。また、同州では保険加入者数の上昇も見られた。ただし、他の県では保険加入者数は前回調査時と比べて顕著な差は認められなかった。保険料の自己負担がある加入者については、前回調査時と比べてやや微減している県も半数程度見られた。前回調査では無給のボランティアの協力が得られていたティエス州において、軒並みボランティアの協力が得られない状態になっていたことが分かった。また、3州全体(特にティエス州)において複数の共済組合が活動停止している状態にあることが分かった。共済組合が活動停止してしまったコミューンでは、インフォーマルセクター向けの健康保険の供給が無い状態にあり、これらのコミューンにおけるUHCの達成状況が懸念される。これらの分析結果を報告書として取りまとめる作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年12月から2019年1月にかけて実施された家計調査に引き続き、共済組合調査の実施に向けて準備を進め、2020年3月にセネガルにて準備会議および調査のプレテストを実施した。プレテスト直後の新型コロナウィルスの蔓延により調査実施が当初予定より遅れたが、同年10月には全てのデータ収集を終えることができた。本調査データを、2017年に行ったベースライン調査と比較する分析を行い、関係政府組織等に報告した。これと並行して、ベースライン時点での共済組合調査と家計調査をマッチングさせたデータの分析、共済組合の四半期活動報告データの分析を行った。したがって、セネガル現地における新型コロナウィルス感染症の蔓延と感染対策による移動制限等による無視できない影響はあったものの、現地政府や調査会社とのオンラインによる調整等を最大限に活用することにより、結果として、年度全体では概ね計画通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の終息をまって、家計調査の準備を再開するとともに、2021年度にティエス、ジュルベル、タンバクンダの3州における家計を対象とした調査を実施する。調査方法の指導、実施管理のため研究分担者2名が現地に出張する。収集したデータの記述統計的な分析を開始する。より長期的な展望としては、本調査データを、同三州に居住する家計における健康保険加入状況、医療アクセス状況、健康状態、医療費による家計破綻状況を調べるための家計調査データと合わせて分析することにより、共済組合のパフォーマンスと家計のアウトカムがどう関連しているか分析することを目標としている。結果を成果報告書としてまとめて、現地に赴きJICA・セネガル政府に報告し、論文作成に着手する。
上記の調査研究に加えて、国家医療保障庁より全国の共済組合から提出される四半期ごとの活動報告に関する行政データ(2017年から2019年分)の提供と分析依頼を受けた。全国の共済組合の人員や財務等に係る運営状況の変遷と、それが保険加入者数の変遷とどう関係しているかについて、全国共催組合の四半期パネルデータを構築して分析に当たる予定である。これにより、三州の共済組合において二回にわたって行った調査データと、全国レベルでの行政データを比較することも可能である。国家医療保障庁より、四半期レポートの情報の確度について検討するよう依頼を受けているため、来年度以降も分析を続ける計画である。
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