2019 Fiscal Year Annual Research Report
新概念高速液流気液界面プラズマによる短寿命活性種バイオサイエンスの基盤確立
Project/Area Number |
18H03687
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 俊郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (30312599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立川 正憲 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (00401810)
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (10272262)
宮本 浩一郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70447142)
高島 圭介 東北大学, 工学研究科, 助教 (70733161)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気液界面プラズマ / 短寿命活性種 / 細胞応答 / 高速液流 / マイクロ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,極短寿命活性種による細胞応答の機序解明と生命機能制御の学術基盤を創成することを目的としている.これまでの成果を踏まえて,2019年度は以下の成果を得た. 1.気液界面プラズマで生成される極短寿命活性種の選択計測手法の確立:これまでに,高速液流中での短寿命活性種の時空間分解計測により,高時間分解(~0.1 ms)でOHラジカルの減衰を測定することに成功している.本年度は第一に,この実験結果に対する理論モデルの構築を行った.一定の気液界面OHフラックスを仮定した反応拡散モデルから得られたOHの表面局在分布と,長寿命活性種による消費を考慮することによって,実験で得られたOHの減衰と計算結果が良い一致を示した.従って,今回構築した反応拡散モデルはプラズマ生成OH挙動を予測する上で有用なモデルであるといえる.第二に,気液界面局在のために低吸光度となる水和電子を観測するためのレーザーキャビティリングダウン分光システムを構築し,本年度は気相中の低吸光度活性種の計測を行った. 2.高速液流への高密度短寿命活性種供給気液界面プラズマ発生技術の開発:これまでに開発した高速液流に高密度活性種を供給できるプラズマ装置において,ガス種としてヘリウムおよび空気を用いることで,気相中に生成される活性酸素・窒素種を変化させ,高速液流中で生成される短寿命活性種の組成を制御できることを示した.さらに,これらの制御された短寿命活性種を病原菌およびアミノ酸に照射することで,活性種組成による殺菌や修飾の作用機序の差異を明らかにした. 3.高速液流中の短寿命活性種の細胞への選択的作用手法の確立と細胞応答機序解明:これまでに確立した微小流路内の高速液流に対して液中プラズマ照射とpH・活性種計測を行うシステムを用いて,微小流路内にアミノ酸および細胞を流して,短寿命活性種組成による修飾や膜輸送の変化を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気液界面プラズマにより高速液流中で生成される極短寿命活性種の計測と理論モデルの構築に成功し,極短寿命活性種のOHラジカルの液流中での挙動を明らかにした.一方で,プラズマを生成するガス種としてヘリウムおよび空気を用いることで,気相中に生成される活性酸素・窒素種を変化させ,高速液流中で生成される短寿命活性種の組成を制御できることを示した.さらに,これらの制御された短寿命活性種を病原菌およびアミノ酸に照射することで,活性種組成による殺菌や修飾の作用機序の差異を明らかにした. 以上の理由により,おおむね順調であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までの成果を踏まえて,今後は以下の研究を推進する. 1.これまでに,高速液流中でOHラジカル等の極短寿命活性種の時空間分解計測を実施し,さらに水和電子の吸収分光を行うためのレーザーキャビティリングダウン分光システム(CRDS)を構築してきた.2020年度は,CRDSを用いて水和電子等の極短寿命活性種の時空間分解計測の実現を目指し,液流中CRDS計測のための実験系確立と液流中吸光度計測を実施する.さらに化学プローブ法を併用して(活性種と標識分子の付加体の吸収分光),種々の極短寿命活性種の選択計測の実現を目指す. 2.これまでに,「荷電粒子エネルギー制御プラズマ」によりイオンおよび電子をエネルギー制御して導電性液体の高速液流に照射するとともに,「帯電反転制御プラズマ」を用いて純水および導電性液体の境界面で種々の活性種を高密度に生成して高速液流中に供給できる装置を構築してきた.2020年度は,高速液流に供給する短寿命活性種をこれまでの活性酸素種,活性窒素種から活性塩素種,活性硫黄種にも拡張することを目指し,これまで開発してきた二つの気液界面プラズマ発生装置を駆使して,供給するガス種および高速液流の液体種を制御して実験を行う. 3.これまでに,微小流路内の高速液流に対して,上流域で液中プラズマを照射して下流域でpHおよび各寿命の活性種の計測を行うとともに,微小流路内にアミノ酸や細胞を同様に流して短寿命活性種の効果を調べるシステムを構築してきた.2020年度は,微小流路途中に細胞を配置するシステムを構築し,細胞配置位置を変更することで極短寿命活性種の細胞への作用を明らかにする.細胞応答は細胞内へのカルシウムイオンの流入をリアルタイムイメージングにより調べ,また活性種作用後の細胞を回収し細胞中のタンパク質変性解析から極短寿命活性種の細胞内での反応対象を明らかにする.
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Research Products
(52 results)