2018 Fiscal Year Annual Research Report
Role of early Earth materials for origin of life
Project/Area Number |
18H03729
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
掛川 武 東北大学, 理学研究科, 教授 (60250669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 善博 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00544107)
小林 敬道 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (20260028)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 初期地球 / 化学進化 / 隕石衝突 / アミノ酸 / 核酸塩基 / リボース / ホウ酸 / 蒸発環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期地球における隕石衝突を模擬した有機分子生成実験を行なった。物質材料研究機構の一段式火薬銃を用いた実験では、13Cにラベリングされた炭酸と窒素を源にし、金属鉄、ニッケルや水との高圧高温反応を行なった。その結果、ホルムアルデヒド、各種アミノ酸、核酸塩基の生成に成功した。特にホルムアルデヒドは糖の起源に繋がる重要な分子であり、糖の起源にも迫れる成果が得られた。東北大学においても高温隕石衝突蒸発雲を模擬した実験を展開し、各種アミンやグリシンの生成に成功した。生成物は新規に購入した液体クロマトグラフィーで分析を行なった。さらに生成物の炭素窒素同位体測定を行い、隕石衝突環境での有機物生成反応経路の特定を行なった。その分析のためにガスクロマトグラフと質量分析計をつなぐインターフェースも新たに購入した。質量分析計の高真空に保つメインテナンスもこなった。これら一連の実験と分析によって、初期地球の隕石衝突イベントの重要性が改めて強調されることになった。生命起源の化学進化の中で重要なステップである、アミノ酸のペプチド(タンパク質)化の実験も行なった。高圧条件および高温蒸発条件で実験を展開し、DKPの生成を押さえながらグリシンの高重合体生成に成功した。次年度以降の継続実験を行うために高圧実験装置の改良もこなった。ペプチドとともに生命起源に重要なヌクレオチド(RNA)生成メカニズを解明するためにホウ酸に富んだ蒸発環境を模擬したホルモース反応実験も展開した。その結果、粘土鉱物存在下で今まで考えられていなかった非アルカリ性条件で、リボースの生成やリン酸化が促進されることがわかった。ホウ酸に富んだ環境での粘土鉱物の特性を調べるためにアメリカデスバレー周辺で野外調査、情報収拾を行なった。成果は国際学会などで発表する一方、英語論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、以下の3つの課題をサブテーマとして取り組んでいる。初期地球環境の中で「生命の材料はどのように準備されたか」「どのようにタンパク質や酵素ができたか」「RNAはどのようにしてできたか」である。この研究において隕石衝突再現実験や初期地球鉱物を用いてホルモース反応実験を展開し、アミノ酸、核酸塩基、リボースの無機的生成を行うとしている。さらにそれら有機分子を初期地球環境模擬実験において重合させ、タンパク質、酵素、原始的RNAを生成することを目指している。これら成果を統合し「初期地球物質」がいかに生命を誕生させるために重要な役割を果たしたか、地球物質無くして生命が誕生しえなかった新たな説を提唱する。今年度は、これら3つの課題に即し目的に合致した研究を展開し、アミノ酸生成、ペプチド生成、リボース生成に関してポジティブなデータが得られた。新規購入した機器の整備などに予想外の時間を費やしたが、概ね目標は達成できた
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Strategy for Future Research Activity |
初期地球環境の中で「生命の材料はどのように準備されたか」という課題に関しては、継続して隕石衝突模擬実験を展開する。生成物の組成依存性が高いことが明らかになりつつあるので、時間が許す限り多くの実験を行う必要がある。現在まで11種類のアミノ酸生成に成功しているが、さらに多くの種類を作り出す予定である。核酸塩基もプリン塩基生成はまだ成功していないので、生成に適した条件を探し出し、成功にこぎつけたい。「どのようにタンパク質や酵素ができたか」という課題を実行するために、18年度には高圧装置の改良を試みた。現在行っているペプチド生成実験にアモルファス状の硫化鉄を混合させ実験を行う予定であるが、チャレンジングな課題として残っている。「RNAはどのようにしてできたか」に関しては、天然での条件(粘土鉱物の種類、リン酸とホウ酸が揃う環境)が重要になり、その条件を探す試みも継続して行う。合わせて初期地球の隕石衝突に関連した特殊事象(大気組成に与える影響など)も継続して収集し、実験に生かしていく。
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Research Products
(20 results)