2019 Fiscal Year Annual Research Report
制限増殖性ウイルスを基盤とする動物インフルエンザの統括的制御
Project/Area Number |
18H03971
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀本 泰介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00222282)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10636757)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「制限増殖性ウイルスを基盤とする動物インフルエンザの統括的制御」という題目で二つの柱で構成される。A. 1回感染型非増殖性ウイルスの鳥インフルエンザワクチンへの応用、および B. 哺乳類インフルエンザの制御法の開発を最終目的とする。 本年度は、B項目を中心に研究を進めた。パンデミックウイルス出現に必要な中間哺乳動物として豚が重要な役割を占めると考えられているが、近年の伴侶動物への感染例の増加から、伴侶動物にもその潜在性があると推測されるため、伴侶動物インフルエンザウイルスがパンデミックウイルスに変異する可能性を評価した。この目的のため、イヌインフルエンザウイルスおよびネコインフルエンザウイルスが、人由来の呼吸器上皮培養細胞に馴化するかを調べ、馴化した場合の遺伝子変化を調べた。その結果、イヌH3N8インフルエンザウイルスとネコH7N2インフルエンザウイルスが、連続継代によりヒトA549細胞に馴化することがわかった。馴化により細胞増殖性がそれぞれ10,000倍以上に上昇した。次に、馴化ウイルスの遺伝子変化を調べたところ、イヌH3N8馴化株にはHAとNA遺伝子に変異が集中しており、PB2, PA, NP, M遺伝子にも一部変異が見られた。一方、ネコH7N2馴化株にもHAとNA遺伝子に変異が集中していた。これらの結果は、ウイルスのレセプター特異性や膜融合性状の変化が、これら伴侶動物インフルエンザウイルスが人に馴化するためには重要になる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B項目の目的の一つである「伴侶動物ウイルスの種間伝播の解析」が計画通りに進んだ。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に予定する各研究項目の実施計画は以下の通りである。 A項目については、引き続き非開裂性HAをもつ制限増殖性ウイルスの構築を行う。1回感染型非増殖性ウイルスは増殖必須タンパク質の機能を欠損させることで作製する。本研究では、開裂性を人工的に欠損させたHA(複数HA亜型)をもつ組換えウイルスをベースとした制限増殖性ウイルスを構築する。調整に必要な野生型HA恒常発現細胞はすでに樹立している。構築した制限増殖性ウイルスの免疫原性を、鶏に接種することで評価する。実験の支障となっていた鶏飼育設備の故障を今年度の研究費で補填する予定であることから、本評価が実施できるようになる。 B項目については、引き続き伴侶動物インフルエンザウイルスのヒト細胞馴化株の馴化機構を解析することでそれらのヒトへの感染性獲得メカニズムを解析する。野生株と馴化株の比較からヒトへの感染性を獲得するために重要な因子とその可能性について、リバースジェネティクスで変異体を構築し解析する。さらに、伴侶動物ウイルスのマウス馴化株を作製する。野生株と馴化株の比較からマウスでの病原性獲得に重要な因子を同定する。マウス馴化株の作製は、ワクチン候補株の効果検証のために今後必要である。
|