2019 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis of the epilepsy-related protein complex LGI1-ADAM22-PSD-95 and its regulatory factors
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18H03983
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深井 周也 東京大学, 定量生命科学研究所, 委嘱教授 (10361792)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 分子間相互作用 / 膜受容体 / てんかん / シナプス / 足場タンパク質 / パルミトリル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経の活動には、シナプスで機能する多様な膜受容体複合体が重要な役割を担っており、その機能異常は神経関連疾患を引き起こす。本研究では、てんかんや痙攣に関連するリガンド-膜受容体複合体LGI1-ADAM22とその下流エフェクターであるPSD-95やStargazinに焦点を当てる。LGI1-ADAM22-PSD-95-Stargazin複合体の構造研究により、膜を介したシグナル伝達機構と病態発症の仕組みを理解して、将来的な疾患の予防や改善の基礎となる分子構造基盤を確立する。 今年度は、PSD-95とADAM22との相互作用様式の解明とPSD-95の脱パルミトイル化酵素の構造解析を中心に研究を進めた。PSD-95の3番目のPDZドメイン(PDZ3)にADAM22のC末端のPDZ結合モチーフを融合させたタンパク質の結晶構造を1.8 Å分解能で決定して、PDZ3によるADAM22のPDZ結合モチーフの認識機構を明らかにした。また、PSD-95の3つのPDZドメイン(PDZ1-3)とStargazinのPDZ結合モチーフとの相互作用を、表面プラズモン共鳴測定により解析して、ADAM22のPDZ結合モチーフの融合の有無で比較したが、有意な結果は得られなかった。PSD-95の脱パルミトイル化酵素であるABHD17ファミリーについては、ほ乳類由来のタンパク質(ABHD17A、B およびC)および線虫由来のタンパク質(AHO-3)の結晶化を検討してきた。N末端のパルミトイル化モチーフを除くことで、大腸菌での発現と液体クロマトグラフィーによる精製は可能であったが、これまでのところ、結晶は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、パルミトイル化されたPSD-95を調製して解析する予定であったが、昆虫細胞やヒト培養細胞での発現では、パルミトイル化された試料を十分に調製できなかった。一方、パルミトイル化されていないPSD-95の解析では、新たにADAM22のC末端のPDZ結合モチーフの認識機構を明らかにした。脱パルミトイル化酵素については、ほ乳類由来の酵素に加えて、線虫由来の酵素を発現・精製して結晶化を試みたが、現在までに結晶は得られていない。研究対象とした試料の扱いの困難さに加えて、今年度は、前半に研究室構成員の異動、後半には研究代表者自身の異動があったことも影響して、進捗としてはやや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外でのLGI1とADAM22の相互作用と高次会合体形成のメカニズムについては、初年度の研究で概ね明らかになった。この時に、2:2の会合体の形成に加えて、3:3の会合体の形成も示唆されたが、最近の研究によって、シナプスでのトランスシナプティックな2:2の会合体に加えて、軸索起始部の同一膜上での3:3の会合体の可能性が考えられるようになった。クライオ電顕解析では、比較的明瞭な3:3の会合体の二次元像が観測されているが、粒子数が少なく、単粒子解析による立体構造決定には至っていない。今後は、試料の調製条件を改善することで、モデル構築が可能な分解能で単粒子解析を行いたい。PSD-95に関しては、パルミトイル化された試料の調製が想像以上に困難であり、更なる試行錯誤が必要である。ADAM22の機能発現に重要なPSD-95以外のアダプタータンパク質についても研究を進める予定である。
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