2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular developmental basis of the asexual reproductive mode "stolonization" in syllid annelids
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18H04006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 徹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00332594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越川 滋行 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (30714498)
林 良信 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 講師 (70626803)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストロナイゼーション / 生活史 / 無性生殖 / 放精放卵 / 神経系 / 表現型可塑性 / 繁殖様式 / ボディプラン |
Outline of Annual Research Achievements |
環形動物門多毛綱シリス科の種では、出芽のように個体の一部から生殖腺を持つ個体(ストロン)が繁殖のために出現し、親個体から分離したのち遊泳し、放卵・放精を行う(ストロナイゼーション)。本研究課題では、シリスの示す無性生殖様式であるストロナイゼーションの発生機構を明らかにする。特に後胚発生において体軸の途中に頭部ができる仕組みについて焦点を当てる。 初年度は、飼育誘導系の確立に力点を置き、安定してミドリシリスを維持することはもちろん、日照条件・月照条件を人工気象機で制御することで個体間での繁殖を同調させるシステムを確立した。また、一生のライフサイクルを研究室で回せるようになったため、各発生ステージの詳細な観察と、要する期間についても明らかとなった。この成果については、日本動物学会誌Zoological Scienceに受理・掲載された。 確立した飼育実験系を用いて、効率的にストロナイゼーションを誘導し、その過程で起こる組織学的な変化についても詳細に観察した。その結果、ストロンの頭部になる部分の内部の神経節が肥大成長し、「脳」に相当する神経節を形成することで、自律的な遊泳活動や異性の認識などが行えるようになることが考察された。さらに、ゲノムサイズを推定すると約500Mbと、将来的にゲノム解析を行うことも可能なサイズであることが判明した。また、トランスクリプトーム解析を行い、遺伝子データベースを構築することで、発生や再生、繁殖に重要な役割を果たす遺伝子群の配列を網羅的に把握することができた。現在これらの遺伝子の発現解析を、リアルタイム定量PCRを用いて行っており、いくつかの遺伝子が興味深い発現パターンを示すことが分かりつつある。 さらに分岐して成長するカラクサシリスの仲間についても採集することに成功し、同様の解析を試みつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ミドリシリスにおける飼育実験系の確率と生活史パターンの記載について、動物学会誌Zoological Scienceに投稿し、受理・掲載された。さらにこの成果は、未知の動物種をモデル実験動物化することにより、今後の研究展開が大いに期待され、動物学会論文賞Zoolocial Science Awardを受賞することとなった。 また、体幹部分が分岐して成長・繁殖を行うカラクサシリスの仲間について、佐渡島にて採集調査を行った結果、多数生息する場所を発見し、いくつかの個体を採集し調査することが可能となった。この成果はシリス研究の第一人者であるスペインのTeresa Aguado 博士らとの共同研究として行うことができ、今後の発展が大いに期待されている。カラクサシリスの仲間については非常に興味は持たれたものの、採集が可能かどうか、研究計画当時は分かって折らず、その意味では当初の計画以上に進展することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
ミドリシリスについては安定的・恒常的に研究材料を維持できるようになったため、ほぼ通年で実験を行えるようになった。また、遺伝子情報も修正機されているため、効率よく各遺伝子の発現解析が行えるようになっている。現在では、動物のボディプランの構築に必要な発生制御因子を始め、生殖細胞や生殖器官の発生・分化に必要な因子、多くの動物で知られる内分泌制御因子などに着目し、精力的に発現解析を行っていく。基本的には、トランスクリプトームデータベースから得られた配列を元に、リアルタイム定量PCRにより発現動態を解析し、興味深い発現パターンを示す遺伝子については in situ ハイブリダイゼーションや免疫染色により詳細な発現部位を同定していく。また、RNAiやゲノム編集による機能解析系の確立についても推し進めていく。 カラクサシリスの仲間についても、同様の解析を進めるが、特に、何故分岐した形態形成が可能になるのかに着目し、分岐部位での組織変化や、そこでの形態形成因子の発現などに着目して解析を進めて行く予定である。その他にも連結してストロンを産生するカキモトシリスなど、多様な繁殖様式を行う種を比較することで、この環形動物の系統で確立した得意な繁殖様式のメカニズムとその進化についての理解を深める。
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Research Products
(13 results)