2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular developmental basis of the asexual reproductive mode "stolonization" in syllid annelids
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18H04006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 徹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00332594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越川 滋行 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (30714498)
林 良信 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 講師 (70626803)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストロナイゼーション / 生活史 / 無性生殖 / 放精抱卵 / 神経系 / 表現型可塑性 / 繁殖様式 / ボディプラン |
Outline of Annual Research Achievements |
環形動物門多毛綱シリス科の種では、出芽のように個体の一部から生殖腺を持つ個体(ストロン)が繁殖のために出現し、親個体から分離したのち遊泳し、放卵・放精を行う(ストロナイゼーション)。本研究課題では、シリスの示す無性生殖様式であるストロナイゼーションの発生機構を明らかにすることを目的としており、後胚発生 において体軸の途中に頭部や尾部が生じる仕組みについて焦点を当てる。2021年度は、これまでに確立した飼育系およびストロナイゼーションの誘導系を用い、ストロナイゼーションの過程で起こる形態・組織変化に基づくステージングを詳細に行い、その過程での遺伝子発現解析を行った。 また、ストロンが分離する以前から尾部の再生も始まることを明らかとし、新たに生じる尾を「二次尾部」として、その形成機構を探っている。また、トランスクリプトームデータに基づいた遺伝子データベースが構築され、発生や再生、繁殖に重要な役割を果たす遺伝子群の配列を網羅的に把握し、その成果を論文として公表した。 ストロナイゼーションの過程での遺伝子発現解析では、ストロンの頭部形成時には身体のposterior側で頭部形成遺伝子が発現上昇する一方、Hox遺伝子群の発現に大きな変化はなく、ストロン頭部となる体節は、「尾部のアイデンティティを保ったまま頭部形成が起こる」という特殊なシステムを有することが示唆された。 また、佐渡において2019年度に採集した分岐するタイプのシリスは、形態学的および分子生物学的解析の結果、新種であることが明らかとなり、キングギドラシリスRamisyllis kingghidoraeと命名し国際誌に公表した。本種においてもトランスクリプトーム解析を推進し、論文投稿中である。今後も可能な限り佐渡でも採集を行い、キングギドラシリスの飼育も試み、分岐する体制の発生過程についても可能であれば解析を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ミドリシリスのストロナイゼーションの過程について、詳細なステージングを行い、それに即した遺伝子発現解析をqPCRに基づいて行った。その結果、この過程でどのような遺伝子群が駆動されてくるのかが明らかとなり、現在論文を作成中である。また、前年度までに明らかにされた、ストロンの中枢神経系の構築過程についても更に詳細な解析を様々な分子マーカーを用いて行いつつある。また、新たな知見として、ストロンが遊離する前に本体側の尾部が予め形成されていることが明らかになった。通常の再生では切断後の治癒過程で尾が再生するが、ストロナイゼーションでは明らかに異なる方法で尾部が形成されていることが示唆されている。 さらに、佐渡沿岸で発見された、分岐するタイプのシリスは分子系統解析や形態学的な調査により、これまでにオーストラリアから記載のある種と近縁であるものの別種であることがわかりキングギドラシリス Ramisyllis kingghidoraeと命名された。この成果は国際誌に掲載され、日本国内でも大きな反響を呼んだ。更にトランスクリプトーム解析を推し進めている。キングギドラシリスの発見とシリスの体制の多様化の洞察は当初の計画で予定していたものではなく、予想外の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ミドリシリスのストロナイゼーションの過程における遺伝子発現プロファイルについては、成果をまとめつつあるため、早急に国際誌への投稿を進める。同時に、神経系の発達についても、引き続き各種分子マーカーを用いて観察を推し進め、成果としてまとめる。二次尾部の発達については、ストロナイゼーションの過程と、再生時や胚発生時の過程と比較することにより、他種でも見られる尾部発達の機構をどのようにリクルートすることでストロナイゼーションを成立させているのかについて、考察する。 おそらく、体幹部の途中に頭部や尾部が発達することに先立って、尾部側に生殖腺が発達する過程が必須であると思われるため、生殖幹細胞の分布と、そこからどのように生殖腺(精巣や卵巣)が発達してくるのかについても、遺伝子発現解析や免疫組織化学を駆使して解明を試みる。これらの解析結果を総合して、どのような生物学的機構の獲得がストロナイゼーションという繁殖様式を可能にしているのか、その進化の過程についても考察を深める。 さらに、キングギドラシリス(分岐するシリス)、カキモトシリス(ストロンが複数連結しているタイプ)についても可能な限り飼育系の確立等を試み、ミドリシリスで得られた知見との共通点・相違点を洗い出すことで、シリス科の多様化についても進化学的な洞察を深めることを計画する。
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Research Products
(13 results)