2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on algorithms and data structures for solving theoretically hard problems in practical time
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18H04091
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
上原 隆平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00256471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 寿樹 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (00590390)
鈴木 顕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10723562)
川原 純 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (20572473)
伊藤 健洋 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (40431548)
山中 克久 岩手大学, 理工学部, 准教授 (60508836)
吉仲 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80466424)
大舘 陽太 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80610196)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 列挙アルゴリズム / グラフアルゴリズム / BDD / 遷移問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
全体では「列挙アルゴリズム」と「遷移問題」と「グラフアルゴリズム」の理論的な研究を進め,これに基づいたBDDによる実装の研究を実施した.個別の研究の進展に留まらず,共同研究の段階に移りつつあると自己評価している.令和元年度は,査読付きジャーナル論文13編,審査付きの国際会議での発表24件と多くの成果を得た.以下に代表的な成果を3つ挙げる. 1) グラフアルゴリズムと列挙アルゴリズムの両方の技法を併せて,いくつかのグラフクラスに関して効率よく全列挙を行うアルゴリズムを開発し,単なる理論的成果にとどめず,実際にグラフの列挙を実装して実行した.必要に応じてスパコンも利用し,限界に肉薄する計算資源を駆使して,巨大なグラフのカタログを作りWeb上に公開した. 2) BDD班では,ERATO湊離散構造処理系プロジェクトを皮切りに,近年,盛んに研究が進められている列挙索引化手法であるフロンティア法を拡張した「色付きフロンティア法」を提案した.これを用いて,いくつかのグラフクラスに対する高速な列挙アルゴリズムの開発および実装を行った.これまで高速であるとされてきた列挙アルゴリズム技法である逆探索法では列挙できない大きなインスタンスに対して列挙索引化に成功した. 3) 隣接互換を基本演算とした最短長ユニバーサル列について,いくつかの理論的な成果を得た.これはデータ圧縮に応用を持つ数学的構造である. 国際的な共同研究という側面についていえば,本研究グループのメンバー同士の共同研究にとどまらず,国際共著論文という点でも十分な成果をあげたと考えている.例えばカナダの研究グループとの共同研究では,最適化遷移という新しいフレームワークを生み出すことに成功した.これは遷移問題を実社会に応用する上で発生する問題点を解決するものであり,遷移問題を実社会に応用する上で重要なアイデアになると期待されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず2019年6月に合宿形式の研究会を実施した.そこでそれぞれの研究の進展を発表し,問題意識の共有を図った.そのあとは適宜,国内の研究会や国際会議等を利用して相互に連絡をとりあい,研究を実施した.その結果,別途研究業績にあげた通りの十分な業績をあげることができた.以下,いくつかの具体的な進展をあげる. 1) 比較的単純なグラフクラスの列挙にも取り組み,単にアルゴリズムを研究開発するだけでなく,実際にスパコンなどに実装し,列挙し,カタログを作ってWeb上に公開した. 2) 部分グラフに関する遷移問題や,整数計画に関する遷移問題など,いくつもの問題を包括する,より一般的な問題に対する遷移問題に対して,容易性困難性両面からの結果を与えることに成功した. 3) フロンティア法を拡張した色付きフロンティア法を提案した.フロンティア法の性能はグラフのパス分解の品質と深く関わりを持ち,高品質なグラフのパス分解を求める効率的なアルゴリズムの開発も合わせて必要となる.パス分解アルゴリズムについては,ユトレヒト大学のグループと現在研究・開発を行っており,アルゴリズムの実装および性能の実験的な検証の段階にある. 4) ZSDD(項分岐決定グラフ)と呼ばれる高圧縮なデータ構造を用いてパスや全域木列挙を行うアルゴリズムを設計した.これは従来のZDD(ゼロサプレス型二分決定グラフ)を用いた手法よりも大幅に記憶量を削減できる. 上記以外にも,業績の数字には上がっていないが,国際会議のプログラムチェアやプログラムコミッティーなどの運営側に関する実績も数多くある.こうしたソサエティ内での貢献は,理論計算機科学分野での日本の研究の存在感を増すためには重要なロビー活動といえる.こうした社会還元や理論的な進展を含めて,全体的には順調に進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度も合宿形式の研究会を実施して問題意識の共有と,研究の進捗の確認を行いたい.ただ現状はCOVID-19の感染防止の観点から,研究スタイルに工夫が必要である.まずはオンライン型の会議の実施を画策する.そこで予備的に研究打ち合わせなどを行い,ある程度全体の意識共有を計る.事態が収束した頃に合宿形式の研究会を実施したいと考えているが,これは状況によって柔軟に対応することとする. 列挙アルゴリズムの観点では,パス分解アルゴリズムの性能をあげることが重要である.この性能が上がれば,列挙・索引化アルゴリズムを用いて解ける問題の規模は飛躍的に大きくなると考えられる.パス分解アルゴリズムのさらなる高性能化を行うとともに,それをフロティア法へと適用することにより,実応用への幅を拡張していく.また,グラフの列挙索引化だけでなく,列挙索引化された情報を活用することによる遷移問題に対するアルゴリズムを検討する.また新たに提案したZSDDを用いて,弦グラフなど,より高度なグラフ構造を高速に列挙するアルゴリズムを設計する予定である. 遷移問題については,理論面での研究は一定の成果が出始めているものの,実社会への応用を考えると,十分に効率的なアルゴリズムとは言えない.これまでの研究で,何が可能で,何が不可能なのかがわかりつつある.これらの結果を基に,パラメタ化アルゴリズムや,近似アルゴリズムなど,様々な観点から研究を進め,実用的なアルゴリズムの開発を目指す. また隣接互換による最短長ユニバーサル列については,より詳細な長さの上界を求めることを目指したい.ユニバーサル列は,全ての置換を互換の分解として圧縮表現するデータ構造であり,BDDやZDDと概念的にも似ていることから,今後も重点的に研究する.
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Remarks |
実際に列挙したグラフクラスのカタログを公開している.
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Research Products
(41 results)