2019 Fiscal Year Annual Research Report
福島原子炉事故により放出された微粒子の環境移行を探るための化学形態の解明
Project/Area Number |
18H04150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大槻 勤 京都大学, 複合原子力科学研究所, 特任教授 (50233193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関本 俊 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10420407)
沖 雄一 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (40204094)
篠原 厚 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60183050)
高宮 幸一 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (70324712)
末木 啓介 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90187609)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子力事故 / 放射性模擬微粒子 / 放射性エアロゾル / 環境放射能 / 分析技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では炉内から放出されたエアロゾルや放射性微粒子の挙動を推測するため、炉内の構造物質や存在する放射性物質を源とし海水を含む様々なエアロゾルや放射性微粒子の生成・成長過程を解明すること目的とする。 まず、燃料デブリから核分裂核種(FP)のうち、I-131,0Te-132,Ba-140(La-140)等を含んだ放射性物質が放出され、周囲の空気中に存在すると予想される溶液状エアロゾルと反応し、放射性エアロゾルとして成長する過程を解明するために、これらの状況を模擬するための装置を開発して人工放射性エアロゾルの生成実験を行った。この結果から、人工の溶液エアロゾルへの元素依(放射性同位元素)存性性があることが示唆された。これらのことから炉内から放出された放射性プリュームの生成メカニズムを推測する知見が得られる。 さらに、実験では環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、採取された放射性微粒子(タイプB)に対しSEM/EDXを用いた外観観察と元素分析を行った。SEM観察により、複数の微粒子の表面から0.1~1μm程度の穴の開いた構造物質が発見され、EDX分析からこの構造物の元素組成は微粒子表面に近いことが分かった。外観及び組成から、この構造物は珪藻土であると推定され、EDX分析から、タイプB粒子の表面の元素組成はO、Si、Naが主体であり、その他Ca粒子やAl,Mgなどを含むことが明らかとなった。次いで、分析から推定された微粒子の原料である珪藻土と海水を電気炉で加熱し、模擬微粒子の生成や分析、及び加熱温度依存性の検討を行った。今後は、珪藻土以外の材料(コンクリートなど)の検討、ならびにレーザーによる急熱・飛散を利用したタイプA粒子に近い模擬微粒子の生成と放射温度計による温度依存性の検討を行い、放射性微粒子の生成過程のさらなる解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
福島の事故によって溶融した炉心の付近で生成する放射性エアロゾルの性状およびその生成メカニズムを知ることは、放出された後の環境中での放射性物質の移行を推測する上で重要な情報となる。核分裂生成物を含んだ放射性エアロゾルを模擬的に生成する装置を開発し、生成させた放射性エアロゾルの性質を調べ、その生成メカニズムの解明を目指した。昨年度までは、溶液エアロゾル化学的性状を解明するため研究用原子炉(KUR)で照射したウラン試料を加熱することで放出される核分裂生成物(FP)を用いた放射性エアロゾル付着実験が行われた。また、環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、イメージングプレートを用いて土壌中の微粒子探索を行い、採取されたType Bと推測される放射性微粒子に対し、SEM/EDXを用いた外観観察と粒子表面の元素分析を行った。環境中のType Bの生成メカニズムを調べるため電気炉やレーザーアブレーションによる放射性模擬微粒子を生成する高温実験が行われている。しかし、コロナ禍の状況のために必要物品(Ge-半導体検出器等)の調達遅れや実験設備の稼働制限、資料収集、発表の機会が制限され、成果公表が十分ではなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
福島原子炉事故により放出された放射性微粒子のSEM/EDX分析により、微粒子の主要構成元素の概要が明らかとなった。この結果をもとにして放射性微粒子の起源となった材料を推定し、さらに事故時の炉内環境を模擬した微粒子の生成実験を行う。現在、レーザーアブレーションや高周波炉等を用いて材料を加熱する高温実験に取り組んでいる。その予備段階として、電気炉等を用いた1000℃以上までの中高温実験を行う。まず、コンクリートやそれを模擬した試料をその他の添加物とともに加熱し、その挙動を観察する。また、加熱する試料を変えながら加熱実験を行い、得られた生成物から微粒子の材料としての妥当性を検証する。実際の放射性微粒子との比較から炉内環境についての考察を行う。最終的には結果を纏めて、学会報告や論文により公表する。
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Research Products
(4 results)