2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Integrated Knowledge through Establishment of an Interactive Research Scheme based on the Open-Data of Research Resources for Wooden Tablets and Related Topics
Project/Area Number |
18H05221
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (70332195)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 正樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (10126295)
久留島 典子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (70143534)
高田 智和 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, 准教授 (90415612)
耒代 誠仁 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 准教授 (00401456)
山本 和明 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (90249433)
山田 太造 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (70413937)
笹原 宏之 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80269505)
大山 航 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (10324550)
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 副所長 (30212319)
桑田 訓也 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50568764)
高田 祐一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 研究員 (50708576)
|
Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
|
Keywords | 木簡 / オープンデータ化 / 文字文化 / 日本史 / IIIF / 交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際的な歴史的文字の連携検索実現のため、「IIIFに基づく歴史的文字研究資源情報と公開の指針」および「オープンデータに関する仕様」(第一版)を、連携各機関(奈良文化財研究所・東京大学史料編纂所・国文学研究資料館・国立国語研究所・京都大学人文学研究所・台湾中央研究院歴史語言研究所)と共同で策定・公表し、機関間連携体制の中核を形成した。 また、上記「指針」「仕様」に基づく、機関連携検索ポータルサイト「史的文字データベース連携システム」の実証試験版(奈文研・編纂所・国文研連携)を令和2年3月に公開。令和2年10月には、台湾中研院・国文研・京大人文研のデータを加えて、多言語(英語・繁体中国語・簡体中国語・韓国語)にて本公開を開始した(https://mojiportal.nabunken.go.jp/)。なお、連携・サイト公開は、国内および台湾メディアで報道された。 木簡情報の研究資源化として、既存の木簡文字画像(約10万文字)をIIIF形式に変換した。また、IIIF用の文字画像切出ツールを開発し、新規に約15,000文字(延べ)のデータを作成した。過年度と合わせて合計約115,000文字の研究資源化を実現した。 文字に関する知識の集積作業として、木簡文字観察記録シートを約50,000文字(延べ)作成した。なお、同シートによる分析が、中国簡牘・韓国木簡にも有効であることが確認されたことを踏まえ、東アジア各地の簡牘・木簡文字の観察作業も実施した。 国際共同研究・学際研究として、令和1年9月に、東アジア木簡に関する国際学会を共催した(北京)。当初、国際学会の開催は、研究計画後半での実施を予定していたが、本研究遂行にあたっての共同研究等の中で、学会共催の呼びかけを受け、予定を繰り上げて国際学会を共催した。また、人文情報学の国内シンポジウム等において、IIIF連携等本研究の成果を報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎である「IIIFに基づく歴史的文字研究資源情報と公開の指針」を当初の計画通り宣言し、「オープンデータに関する仕様」を策定した。この意義は非常に大きいと考える。各研究分担者等が、熱意と共通の目的を明瞭に設定することで、指針と仕様の策定を実現できた。また、木簡研究資源のオープンデータ化も着実に進めることができた。 「史的文字データベース連携検索システム」の開発・公開は、当初計画を前倒しして実現した。今回の連携検索では、連携機関が増え、またデータ量も大幅に増大し、さらにデータの内容にもバリエーションが増えている。上記においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、様々な打ち合わせ・会合や確認作業には困難を伴ったものの、オンライン会議システム等を積極的に活用することで、より緊密な共同研究を実施し、データ連携を実現した。 また、木簡の情報資源化・木簡文字に関する知の蓄積も、当初予定より若干速く進捗している。 そして、研究期間後半に計画していた国際学会を早期に実現できた。これは、本研究に対する海外からの関心が高まっていることを反映している。国際学会では、蓄積中の最新データを元に報告・議論を行うことができた。国際学会を通じて、本研究の現時点での成果を積極的に公表できたと同時に、本研究をより精緻・具体的に進める重要な視点を獲得できた。研究計画の繰り上げが、計画全体に好影響をもたらしたと考える。 一方、木簡整理作業のオールデジタル化による木簡研究資源化の促進や、参加誘発のための直接的な体制の整備は若干遅延している。ただし、一定の目処は得ており、研究計画の変更や、他研究に影響を与えるものではないと考える。 以上から、研究は全体として順調に進展しており、おおむね順調に進捗していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
「史的文字データベース連携検索システム」の強化とさらなる参加の促進のため、異体漢字対応テーブル・ポータルサイト設計仕様書・API等の公開(日本語・英語)公開し、多様なポータルサイトの構築が可能な「開かれた」環境を提供する。また、国内機関への働きかけを強化し、資料の研究資源化・公開への協力を行い、研究資源公開の促進を目指す。デジタル画像作成や文字切り出し等のノウハウやツールを提供する他、「木簡庫」DBへのアップも視野に調整する。さらに、文字画像検索システム「MOJIZO」を改修し、2021年度中に連携検索ポータルへの実装を目指す。 研究資源化の加速のため、編纂所システムの改良による木簡整理作業への援用実験を実施する。同システムの導入により、木簡の調査・整理作業のデジタル化を実現し、木簡の研究資源化を促進すると共に、作業中の様々な気づきの研究資源化を目指す。並行して、木簡文字の情報資源化ならびに観察記録シート作成を継続的に実施する。 新たに、深層学習を利用した研究への展開を目指し、文字鮮明化の画像処理研究や、手書き文字画像からの運筆情報復元研究に着手する。 東アジア漢字文化に関する共同研究については、日中韓簡牘総合研究集会の共催・参加等、中国社会科学院との共同研究を強化し、多様に展開する「ローカルな漢字文化」に迫る観点からの研究を推進する。また、韓国国立文化財研究所・慶北大学校との共同研究の実施に向けての調整を進める。 その他に、分担者を中核とする研究会や、外部講師を招いての講演会、全国の木簡調査者とのワークショップを定期的に開催することにより、研究内容・成果の共有とブラッシュアップ、調査現場への普及や調査現場からのフィードバックを確実に積み重ねたい。
|