2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H05229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 正明 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (10253395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 洋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (20379598)
矢木 真穂 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 助教 (40608999)
佐藤 衛 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (60170784)
齋尾 智英 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80740802)
苙口 友隆 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (90589821)
富永 大輝 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 研究員 (50513694)
井上 倫太郎 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (80563840)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | 階層関連ダイナミクス / 中性子溶液散乱 / タンパク質重水素化 / 計算機連携解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、蛋白質科学の未踏領域である時間領域ピコ秒―マイクロ秒、および空間スケールピコメータ-マイクロメータに存在する階層間連携ダイナミクスを明らかにするため、蛋白質の構造・ダイナミクスを可視化する試料・測定・解析の手法を開発し、実際の系に適応することで新たな生命科学を開拓することを目指している。 具体的には、ドメイン運動を可視化するのに適した【試料調製技術開発】、調製された試料の特長を生かした中性子散乱法と他の測定法を統合的に用いた【測定技術開発】、得られた測定データを計算機シミュレーションにより解析する【解析法開発】を行っている。 令和2年度は、コロナ禍の影響もあり、大型施設での共同実験は最低限の実施に絞ったが、各研究グループの研究室内で実施できる研究の充実と論文発表を重点に行い、以下の成果が得られた。【試料調製技術開発】蛋白質重水素化については、これまでの成果を基にしたマニュアルの充実(ソフトウェアの追加など:研究グループのHPで公開)とともに、論文発表を行った。ドメインライゲーションの開発では、Tri-Ubの大量培養システムの構築に加えて、世界で初めてHef、ER60のドメインライゲーションに成功した。【測定技術開発】J-PARCにおいてHefのダイナミクスの温度依存性の測定を行った。この際に従来の測定セルでは温度耐性が低いことが判明したので新規セルの開発も行った。【解析法開発】従来の全原子分子動力学シミュレーション法に加えて、広い位相空間の探索を得意とする粗視化分子動力学シミュレーション法を用いた解析手法の開発を行い、小胞体内蛋白質ER60の内部運動の解明に成功した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度はコロナ禍の影響で、研究室閉鎖や海外施設での実験禁止・国内の移動の制限(国内大型施設での実験制限)があり、異なった大学・研究施設に所属する研究グループが連携して研究を進めている本研究課題にとっては困難な状況であった。そこで、この状況に対応すべく「TV会議を活用した研究会議の活性化」「成果の論文化」「所属施設での研究の充実」「国内施設での実験は施設グループがメールインで担当する」方針で進めることにより、これまで通りの研究レベルを維持できたと考えている。具体的には、酵素を用いたマルチドメインのライゲーションの成功は、分野を超えたインパクトのある成果であると考えている。また、J-PARCの中性子準弾性散乱装置を用いた「Hefの内部運動の温度依存性の測定」では大変興味深い成果を得ている。また、上述の通り計算機解析手法もグループに加わった博士研究員により粗視化分子動力学法を取り込んだ新たな解析法の開発が進んだ(一部はER60の溶液ダイナミクスとして発表した)。 以上より、コロナ禍により当初企図していた内容で実施できない項目(海外施設を用いた実験)もあったが、その分を十分に補う進展があったといえるので、全体として「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究ターゲットタンパク質であるHef, Tri-Ub, MurD, ER60の試料調製技術の開発(蛋白質制御重水素化法・マルチドメインライゲーション法・大量調製法)は、これまで予定以上に進行しているので、このまま各グループで順調に進めていき、散乱実験時に十分な品質・量を供給できる体制を整える。溶液構造・ダイナミクス測定に関してはJ-PARCを用いた中性子準弾性散乱測定は新規セル・測定条件検討もほぼ終了したので、上述の試料の充実に合わせ種々の条件での測定を進める。中性子小角散乱・スピンエコー測定は海外施設での実験の実施は現時点では見込めない。そこで国内にて再起動した研究炉(JRR-3)の実験利用再開に合わせて、実験体制を構築して実施する。解析手法はこれまで通り苙口グループによる全原子分子動力学法等による構造解析手法開発に加え、杉山グループでの粗視化分子動力学法を基軸とした解析手法開発も併せて進める。 また、これまで通り研究成果の学会発表・論文発表に加え、シンポジウム・ワークショップの開催も積極的に進め、他手法との交流も行う。
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Research Products
(33 results)