2019 Fiscal Year Annual Research Report
From Quarks to Neutron Stars: Challenges in QCD
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18H05236
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
初田 哲男 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, プログラムディレクター (20192700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷹野 正利 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00257198)
青木 慎也 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (30192454)
久徳 浩太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (30757125)
石井 理修 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (40360490)
土井 琢身 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (70622554)
井上 貴史 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80407353)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | 中性子星 / 格子量子色力学 / バリオン間相互作用 / 量子多体問題 / 高密度状態方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
京コンピュータで生成した物理点近傍(mπ=146MeV)の(2+1)-flavorゲージ配位を用いたバリオン間相互作用の解析を行った。S=-2に関する主要結果は、(i) ΛΛ相互作用は低エネルギーで弱い引力を持つこと、(ii) T(アイソスピン)1重項のNΞ相互作用は低エネルギーで強い引力を持つこと、(iii)両チャンネルの結合は短距離でのみ働くこと、とまとめられる。S=-3については、spin=2のNΩ状態に約2MeVの弱い束縛状態が存在する可能性を示した。これらの結果は、HAL QCD法の理論基盤の確立と相俟ってQCDの第一原理計算からS=-2, -3のハイペロン相互作用の正体を世界で初めて明らかにしたという意義を持つ。さらに上記S=-2の計算結果を用いて、Ξハイパー核の厳密計算を行い、NNNΞの4体系に浅い束縛状態(約0.36MeVの結合エネルギー)が出現することを明らかにした。また、またS=-2の計算結果は、ΛΛ閾値以下のHダイバリオンの存在を否定するものであり、30年以上にわたるHダイバリオンの問題に終止符を打った。さらに、S=-2, -3の計算結果を検証すべく、 ppおよびpA衝突におけるバリオン対運動量相関の測定がLHC-ALICE検出器を用いて行われている。
高密度物質に関しては、クォーク物質が中性子星の性質(半径、質量、潮汐変形率)に与える効果を考察した。クォーク物質がカラー超伝導かつ強相関するような硬い状態方程式の場合には、ハドロン相との滑らかなクロスオーバーが可能となり、最大質量が太陽質量の2倍程度で、半径が11.5km程度の比較的小さな半径を持ち、重力波観測波形とも矛盾しない潮汐変形率を持つ中性子星が実現可能であることを示した。さらに、この状態方程式の数値テーブルをCompOSEデータベースに登録し、数値相対論や中性子星構造計算に供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに以下を達成したことから順調に研究は進展している。 1.京コンピュータを用いた物理点近傍でのゲージ配位を用いたS=-2,-3のハイペロン相互作用に関する研究を完成させた。2.格子QCDデータを高精度化するLapH法の実装に目処がついた。3.ハドロン-クォーククロスオーバー描像に基づいた状態方程式を構築し、その数値テーブルをCompOSEデータベースで公開した。4.チャンネル結合クラスター変分法に関する理論研究が進展した。5.格子QCDで得られたS=-2のハイペロン相互作用のΞハイパー核への応用、S=-3のNΩ相互作用の重イオン衝突への応用を行った。6.バリオン間相互作用に関するHAL QCD法とLuescher法の関係を曖昧さなく理論的・数値的に明らかにした。7.中性子星-ブラックホール合体現象と中性子星構造論の橋渡しに端緒を付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には以下の研究を推進する予定である。1.京コンピュータで生成したゲージ配位を用いたS=-1のバリオン間相互作用を集中的に解析し、ΛNおよびΣNの結合チャンネルハイペロンポテンシャルを導く。2.格子データから角運動量成分を正確に抜き出すためのMisner法を、上記S=-1のバリオン間相互作用に適用する。3.高精度計算のためのLapHアルゴリズムのベンチマークテストをs/p/d波で行う。4.結合チャンネルクラスター変分法の理論を完成させ、ハイペロンポテンシャルを用いたテスト計算を行う。5. 格子QCDポテンシャルとブルックナー理論を用いて、高密度媒質中でのΛおよびΣの一粒子ポテンシャルを導出する。6.ハドロン-クォーククロスオーバー型状態方程式を有限温度に拡張子し、数値テーブルをCompOSEに登録する。2021-2022年度には以下の研究を推進する予定である。2021年に稼働を予定している富岳コンピュータを用いた物理点(パイオン質量 135MeV)かつ大体積でのゲージ配位生成を行い、前年度までの理論的準備をもとに、主としてS=0, -1, S=-2のバリオン二体系について、s/p/d波の格子QCDポテンシャルを求める。バリオン三体相互作用については、中性子星の内部構造に関係して特に重要となる、NNN,ΛNN, ΣNN のチャンネルに焦点をあてた計算を行う。結合チャンネルクラスター変分法を用いて、これらのバリオン間相互作用をインプットにした一様バリオン物質の状態方程を構築する。さらにThomas-Fermi計算により一様相の状態方程式を低密度非一様相へと拡張すると同時に、クロスオーバー接続法により一様相の状態方程式を高密度クォーク相へ拡張する。これにより、広範囲の密度、温度、粒子混在度に対する熱力学量を完備した数値テーブルを完成し、国内外の研究者に向けた公開を行う。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Lambda-Lambda and N-Xi interactions from Lattice QCD near the physical point2020
Author(s)
K. Sasaki, S. Aoki, T. Doi, S. Gongyo, T. Hatsuda, Y. Ikeda, T. Inoue, T. Iritani, N. Ishii, K. Murano, T. Miyamoto
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Journal Title
Nucl. Phys.
Volume: A98
Pages: 121737
Peer Reviewed
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[Journal Article] NΩ dibaryon from lattice QCD near the physical point2019
Author(s)
T.Iritani, S.Aoki, T. Doi, F. Etminan, S. Gongyo, T. Hatsuda, Y. Ikeda, T. Inoue, N. Ishii, T. Miyamoto, K. Sasaki
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Journal Title
Phys. Lett.
Volume: B792
Pages: 284-289
Peer Reviewed
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