2018 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of Attosecond Science by Next-generation Ultrashort-pulse Lasers
Project/Area Number |
18H05250
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
板谷 治郎 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50321724)
|
Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
|
Keywords | 極短パルスレーザー / アト秒科学 / 非線形光学 / 軟X線分光 / 超高速分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度の研究実施計画では、(1)高出力Ybレーザー開発のための調査研究、(2)超広帯域シードパルス発生手法の確立、(3)アト秒軟X線分光ビームラインの開発、の三項目を進めることとしていた。一方、本研究課題採択後に、光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)がスタートしたため、項目(1)の高出力Ybレーザー開発の見直しが必要となった。そのため、平成30年度は、項目(2)(3)について集中的に研究開発を行った。以下、この二項目についての研究実績概要を説明する。 (2)超広帯域シードパルス発生手法の確立 フェムト秒Ybレーザー増幅システムを用いて、サファイア結晶またはYAG結晶中でのフィラメンテ―ションによる白色光発生実験を行い、波長500~1000 nmをカバーする超広帯域白色光発生を確認した。特に波長500~950 nmでのスペクトルはスムースな形状であり、極短パルスシード光発生に適していることが判明した。また、波長1030 nmにおいて複数の石英薄板を用いた二段階パルス圧縮を行い、パルス幅6.5 fsの極短パルス発生に成功した。本構成で得られたフェムト秒パルスに対して差周波発生を行い、KTA結晶で光パラメトリック増幅することより、波長2.8~3.8μmで波長可変かつキャリアエンベロープ位相(CEP)安定な中赤外パルスを得た。本光源により、Ybレーザーを用いた光パラメトリック増幅システムの基本構成を実証できた。 (3)アト秒軟X線分光ビームラインの開発 差動排気されたガスセルを用いた軟X線発生部、トロイダルミラーを用いた集光部、および軟X線分光器から構成されるビームラインを構築した。高圧ガスセルの利用によって、ヘリウムおよびネオンガスを用いた高効率高次高調波発生が実現し、「水の窓」全域(280~540 eV)をカバーするアト秒軟X線パルスの発生に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度は、フェムト秒Ybレーザー増幅システムをベースとした光パラメトリック増幅システムを構築し、その最適化および特性評価を行った。その結果、Ybレーザーを用いた光パラメトリック増幅システムにおいて、高安定なキャリアエンベロープ位相の長波長フェムト秒パルス発生、および、波長1030 nm帯におけるサブ2サイクルの極短パルス光発生に成功した。この結果は、サブピコ秒の高安定・高繰り返しYbレーザーシステムを用いることにより、高強度極短パルスが得られることを示しており、アト秒パルス発生のためのドライバー光源としての有用性を実証できた。この成果は、光パラメトリック増幅器の基本設計を行うという当初計画を大きく上回るものである。 アト秒軟X線分光ビームラインの開発においては、差動排気ガスセルの開発がほぼ完了し、最大3.5気圧の背圧での高次高調波発生が可能となった。高調波発生の圧力依存性を測定した結果、Heガスでは2.8気圧、Neガスでは1.6気圧が最適圧力であり、このときに最も高い軟X線フォトンフラックスを得た。発生した軟X線のスペクトル帯域は、「水の窓」(280~540 eV)の全域をカバーするものであり、軽元素としては炭素と窒素、遷移金属としてはチタンの吸収端での吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)を実証した。また、得られた軟X線パルスは、ハーフサイクルカットオフと呼ばれるCEPに依存したスペクトル構造をもつため、水の窓領域で孤立アト秒軟X線パルスが得られていることを確認できた。これらの結果は、アト秒軟X線分光にむけての重要なステップである。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、高出力Ybレーザーと光パラメトリック増幅(OPA)光源の開発については、光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)での光源開発との重複を避けるため、高繰り返し型の小型Ybレーザーシステムを用いた高強度極短パルスOPA光源の開発を行うこととする。 軟X線ビームラインはほぼ完成したため、semi-infiniteセルを用いた差動排気システムへのアップグレードや光源の安定化等の改善を進める。また、時間的に同期したアト秒軟X線パルスとフェムト秒レーザーパルスを用いたアト秒軟X線吸収分光の実証を目指して、気相分子を対象とした超高速分光実験を行う。
|
Research Products
(47 results)
-
-
-
[Journal Article] High-order harmonic generation from hybrid organic-inorganic perovskite thin films2019
Author(s)
Hirori Hideki, Xia Peiyu, Shinohara Yasushi, Otobe Tomohito, Sanari Yasuyuki, Tahara Hirokazu, Ishii Nobuhisa, Itatani Jiro, Ishikawa Kenichi L., Aharen Tomoko, Ozaki Masashi, Wakamiya Atsushi, Kanemitsu Yoshihiko
-
Journal Title
APL Materials
Volume: 7
Pages: 041107~041107
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
[Journal Article] Ultrafast Control of Ferroelectricity with Dynamical Repositioning of Protons in a Supramolecular Cocrystal Studied by Femtosecond Nonlinear Spectroscopy2019
Author(s)
Umanodan Tsugumi, Kaneshima Keisuke, Takeuchi Kengo, Ishii Nobuhisa, Itatani Jiro, Hirori Hideki, Sanari Yasuyuki, Tanaka Koichiro, Kanemitsu Yoshihiko, Ishikawa Tadahiko, Koshihara Shin-ya, Horiuchi Sachio, Okimoto Yoichi
-
Journal Title
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 88
Pages: 013705~013705
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Photo-induced semimetallic states realised in electron-hole coupled insulators2018
Author(s)
Kozo Okazaki, Yu Ogawa, Takeshi Suzuki, Takashi Yamamoto, Takashi Someya, Shoya Michimae, Mari Watanabe, Yangfan Lu, Minoru Nohara, Hidenori Takagi, Naoyuki Katayama, Hiroshi Sawa, Masami Fujisawa, Teruto Kanai, Nobuhisa Ishii, Jiro Itatani, Takashi Mizokawa, Shik Shin
-
Journal Title
Nature Communications
Volume: 9:4322
Pages: 1~6
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
[Presentation] ハロゲン化金属ペロブスカイトからの高次高調波の観測と発生機構2019
Author(s)
廣理英基, 夏沛宇, 篠原康, 乙部智仁, 佐成晏之, 田原弘量, 石井順久, 板谷治郎, 石川顕一B, 阿波連知子, 尾崎雅司, 若宮淳志, 金光義
Organizer
日本物理学会第74回年次大会
-
-
-
-
-
[Presentation] High-order harmonic generation from hybrid lead halide perovskites2019
Author(s)
Hideki Hirori, Peiyu Xia, Yasushi Shinohara, Tomohito Otobe, Yasuyuki Sanari, Hirokazu Tahara, Nobuhisa Ishii, Jiro Itatani, Kenichi L. Ishikawa, Tomoko Aharen, Masashi Ozaki, Atsushi Wakamiya, and Yoshihiko Kanemitsu
Organizer
APS March Meeting 2019
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Ultrafast photo control of proton-mediated organic ferroelectric systems2018
Author(s)
Tsugumi Umanodan, Keisuke Kaneshima, Kengo Takeuchi, Nobuhisa Ishii, Jiro Itatani, Koichiro Tanaka, Hideki Hirori, Sachio Horiuchi, Tadahiko Ishikawa, Shin-ya Koshihara, and Yoichi Okimoto
Organizer
The 12th International Conference on Excitonic and Photonic Processes in Condensed Matter and Nano Materials (EXCON 2018)
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-