2021 Fiscal Year Annual Research Report
Low temperature ammonia synthesis by heterogeneous catalysts enhancing electron-donating power
Project/Area Number |
18H05251
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
原 亨和 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70272713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Chandra Debraj 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (20802309)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | アンモニア合成 / 不均一系触媒 / 電子供与体 / アルカリ土類金属水素化物 / 鉄 / ルテニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度では、100 ℃でもNH3を合成できる鉄系不均一系触媒の構築に初めて成功し、そのメカニズムを熱力学、速度論、分光学的手法によって明らかにした。 本研究はH2とN2を原料としたNH3大量生産開始からの課題であるNH3収率の飛躍的な向上を最終目標としており、アルカリ土類金属水素化物と遷移金属で構成される触媒を基盤とすることによって、80%以上のNH3収率を5 MPa未満の圧力で達成する不均一系触媒を創出することを目的としている。これは、150 ℃程度以下の反応温度でNH3を合成できる触媒の創出を意味する。 令和3年度では鉄を活性サイトする様々な触媒デザインを検討した。その結果、BaH2とBaOの混合物(BaH2-BaO)を電子供与体として担持した20~30 nmの金属鉄粒子(BaH2-BaO/Fe)のみが100 ℃でもNH3を合成できる触媒として機能することを見出し、当該触媒上のNH3合成の律速段階はN2の解離吸着ではなく、その後のNHn種の生成であることを明らかにした。また、BaH2-BaO/Feに吸着したN2分子は極めて強く電子を供与されており、容易にN原子に分解されることがFT-IRによって示唆された。更に、速度論的解析により、当該触媒のturnover frequency (TOF)がこれまで開発・発表されてきたRu、Co、Ni系触媒の数百倍~数千倍に達することが明らかになった。反応温度の低下と共にこれらの従来触媒の遷移金属表面には大量のH原子が強く吸着し、N2の解離吸着サイトが減少する。このため、反応温度の低下によって従来触媒のNH3合成活性・効率は著しく低下する。その一方、BaH2-BaO/Feでは低温でもH原子が鉄表面に強く吸着することがなく、十分なN2の解離吸着サイトが確保できるため、高いNH3合成効率が維持される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近年、Ru、Co、Ni等の鉄以外の遷移金属を活性サイトとした触媒によるH2とN2からのNH3合成が多数報告されている。その中でも、Ru系の触媒のいくつかは従来の鉄触媒を上回るNH3合成活性を示す。このため、鉄はNH3合成に高い活性を示さない古典的な遷移金属と見なされている。更に、従来の鉄触媒は200 ℃未満でNH3を合成できないため、鉄による低温NH3合成は困難と考えられてきた。 このような背景の中、電子供与体を鉄粒子に担持する新たな触媒デザインが鉄触媒の低温作動化に有効であることを本研究は世界に先駆けて見出し、この指針に基づく触媒BaH2-BaO/Feが100 ℃でもNH3を合成できることを示した。なお、電子供与体表面に遷移金属ナノ粒子を固定化する従来の触媒デザインはRu、Co、Ni系触媒の高性能化、あるいは低温作動化に有効であるが、鉄系触媒では機能しない。また、本研究のメカニズムの解明を通してBaH2-BaO/Feでの触媒デザインの有効性を多角的に検証できた。今後の触媒開発の大きな指針となるこれらの重要な知見が令和3年度の1年間で得られたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)創出した触媒による目標達成の確認:本研究の目標達成には150 ℃程度以下の反応温度でNH3をN2とN2から合成できる触媒が不可欠である。そして本研究により、100 ℃以下でNH3を合成できる2つの触媒(Ruナノ粒子を固定化したCaFH固溶体(Ru/CaFH)と上記BaH2-BaO/Fe)が初めて創出された。令和4年度ではこれらの触媒により80%以上のNH3収率を5 MPa未満の圧力で達成する。1 MPa以上で加圧できる固定床流通反応システムは既に稼働できる状態にある。このシステムにRu/CaFH、あるいはBaH2-BaO/Feの加圧成型ペレットを充填し、反応温度150 ℃以下、5 MPa未満の加圧でNH3を合成し、目標達成を確認する。 (2)大気中で調製できる鉄―金属水素化物電子供与体複合触媒の創出:本研究は遷移金属と電子供与能が高いアルカリ土類金属水素化物の複合材料が低温NH3合成に有効な触媒であることを示してきた。しかし、アルカリ土類金属水素化物の運用には湿度が低い環境が必要であり、これは当該触媒の実用化の障害となっていた。電子供与能が高い金属水素化物を酸化物等の大気中で安定な化合物からNH3合成反応器中で簡単に合成できるのなら、大気中で複合化した当該化合物と遷移金属前駆体をNH3合成反応器中で高活性かつ低温で作動するNH3合成触媒に変換することが可能となる。既にAlH3や希土類水素化物が大気中で安定な化合物からH2雰囲気下のNH3合成反応器中で合成できることが確認されており、予備的計算ではこれらの水素化物が高い電子供与性を示すことが予想されている。令和4年度ではAlや希土類の酸化物を担持したα-Fe2O3を大気中で調製し、これをH2雰囲気下のNH3合成反応器中で金属鉄―金属水素化物に変換することによって低温作動型NH3合成触媒を構築する。
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Research Products
(15 results)