2021 Fiscal Year Annual Research Report
Role of ILC2 in idiopathic interstitial pneumonia
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18H05286
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
茂呂 和世 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90468489)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | ILC2 / IL-33 / IPF / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(IPF)は平均生存期間3~5年という予後不良な指定難病疾患で、有病率は1万人に1人とされ特発性間質性肺炎の約半数を占める頻度の高い慢性疾患である。呼吸困難や死に至ることことから治療法の開発が急務とされているが、多くの研究者、臨床医が病態解明に挑んできたにもかかわらず、未だ画期的な治療法が存在しない現状は、適切なモデル動物がいないためとされてきた。我々はグループ2および3の自然リンパ系細胞(ILC2およびILC3)を抑制する機構を持たないIfngr1-/-Rag2-/-マウスが、肺において重度の線維症を自然発症することを明らかにした。Single cell RNA-seq解析によって、Ifngr1-/-Rag2-/-マウスの肺ではコラーゲン産生に先立って発症期にIL-33受容体とIL-13発現発現の高いILC2亜集団が増加することが明らかになり、また、ILC欠損またはILC2を強力に活性化するIL-33の欠損により線維化発症が抑制されることが示された。ILC2はin vitroで線維芽細胞のコラーゲン産生を直接誘導し、その病的な線維芽細胞は慢性期にIL-33を産生し始め、線維芽細胞とILC2の間で不可逆的な線維化に至る正のフィードバックループを形成することが明らかになった。この病原性線維芽細胞が一端出現すると、ステロイドによる治療が不可能になる一方で、出現する前にステロイドを用いることでILC2の活性化を防止し、線維化発症を抑制できることも明らかになった。さらに、IPF患者のILC2におけるIL-33受容体およびIL13の発現の亢進とIFNGR1の発現の低下が確認できたことから、我々の線維化マウスとIPF病態の類似性が示され、線維化研究におけるこの新しいマウスモデルの価値が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
IPFは特定の抗原刺激によって引き起こされるものではないため、本研究では抗原に依存しない条件下で2型および3型サイトカインの主要供給源であるILC2およびILC3が線維化を誘導すると考えた。この仮説を検証するために、IFNγによるILC2とILC3の抑制を欠いたIfngr1-/-Rag2-/マウスを樹立し、獲得免疫系がない状態でのILC2とILC3の機能増強を解析し、IFNgr1-/-Rag2-/マウスが年齢とともに自発的に線維化を発生することを明らかにした。Ifngr1-/-Rag2-/-マウスを用いることで、従来の一過性の線維化病態を形成する薬剤誘発型線維症モデルでは解析が困難であった発症前、発症、慢性期の線維化における細胞動態の全体像を明らかにすることができた。Ifngr1-/-Rag2-/-マウスで得られた結果はIPF患者サンプルと一致したことから、この新しいマウスPFモデルは、一度進行すると治療が困難な線維化の初期段階における治療標的の特定に有用であると期待される。また本研究の成果は、線維症がなぜ発症するかだけでなく、1度線維化が始まるとなぜ治癒しないのかという疑問に対しても、線維芽細胞によるIL-33の半永久的な供給がILC2の持続的活性化を誘導し病態が継続するためであるという答えを導き出した。
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Strategy for Future Research Activity |
線維化発症の大きな流れが明らかになったことから、現在、発症初期にどのような因子がトリガーとなっているかを解析している。特に注目しているのがIL-33であるが、IL-33の重要性は我々の線維化モデルマウスだけでなく、ブレオマイシン誘導性線維症モデルマウスや寄生虫誘導性線維化モデルマウスでも報告されている。現在明らかになっていない点は、なぜIL-33が産生されるようになってしまうかという点である。1つは肺が呼吸による摩擦でIL-33のトリガーとして知られる機械的刺激を生み出す臓器であるという仮説である。2つ目は我々の予備データから得られている好中球による作用である。3つ目は加齢によって産生される因子がIL-33に関与する可能性である。これら3つの可能性の中からIL-33が肺の中で産生されるメカニズムを明らかにする事で、線維症の早期発見や治療法開発につながると期待している。
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Research Products
(10 results)