2018 Fiscal Year Annual Research Report
ミジンコの環境依存型性決定を制御する幼若ホルモン生合成系の解明
Project/Area Number |
18J00149
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
豊田 賢治 神奈川大学, 理学部 生物科学科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ミジンコ / 幼若ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、ミジンコDaphnia pulex WTN6系統から幼若ホルモン酸メチル基転移酵素(JHAMT)のゲノム領域を単離し、プロモーターの下流領域にsgRNAをデザインした。今後、ミジンコの順化が終わり次第、マイクロインジェクション法によりJHAMT-GFP knock-inミジンコの作出をおこなう。また、英国のバーミンガム大学との共同研究により、オオミジンコDaphnia magnaにおいて日長依存型性決定を示す2系統を見出すことに成功した。興味深いことに、そのうちの1系統はWTN6系統と同じく長日条件でメスを、短日条件でオスを産仔するが、もう一方は長日条件でオスを、短日条件でメスを産仔する。我々はこれら2系統が幼若ホルモンの暴露でオス産生能を示すことを見出しており、WTN6系統と並び環境依存型性決定の有用なモデル系統となることが期待される。我々はすでにこの2系統のゲノムリシークエンスデータを取得し、神奈川大学での順化も進めていることからゲノム編集をはじめWTN6系統との比較解析を進める基盤は整いつつある。 さらに、ミジンコ生体から内在性の幼若ホルモン分子の定性・定量解析法を確立するために、サンプル調整や内部標準物質の検討を進めている。ミジンコの内在性の幼若ホルモン分子の候補として他の甲殻類で報告されているmethyl farnesoateが挙げられるが、すでに甲殻類十脚目に属するクルマエビMarsupenaeus japonicusからはmethyl farnesoateの検出に成功しており、本法をミジンコに適用することでミジンコの内在性の幼若ホルモン分子の同定と分析が可能であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究計画では、CRISPR/Cas9によるJHAMT-GFP knock-in系統を作る予定であったが、当初予定していた方法から2018年に発表された新法に切り替えたため、研究の進捗は少し遅れている。しかし、英国の研究グループとの共同研究から、当初予定していなかった日長依存型性決定様式を示すオオミジンコ2系統を見出した。今後、これらを用いることで日長依存型性決定の分子メカニズムを種内および種間で比較することが可能となることから、本研究が当初の計画よりも大きく進展することを期待している。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きGFP knock-in系統の作出を進めるが、それと並行してミジンコ以外の甲殻類を用いて幼若ホルモンの生理機能などの種間比較解析にも着手する。具体的には、クルマエビやワタリガニ科のガザミを用いて、幼若ホルモンの生合成システムやその生理機能を解明するための解析を進めている。甲殻類の幼若ホルモンの生理機能はほとんど分かっていないことから、ミジンコで得られた知見や手法を海産甲殻類へ積極的に応用することで、基礎生物学にとどまらず水産学的な応用研究にも繋がっていくことを期待している。
|