2018 Fiscal Year Annual Research Report
職域における「うつ」のイベント構造分析――日英の比較から――
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18J00210
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Research Institution | Ryukoku University |
Research Fellow |
志水 洋人 龍谷大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 職域 / うつ / 日本 / 英国 / 病いの語り |
Outline of Annual Research Achievements |
日英におけるうつ病関連自助会での参与観察およびインタビューを主たる方法とする本研究の目的は、職域の「うつ」の語りにおける事象の間の因果連関構造の固有性を明らかにすることを通して、こころの病いの経験をとらえる新たな視座を提示することである。具体的には、以下の三つの問いに対する答えを、仮説生成的観点から与えることを目指している。(A)日本では職域の「うつ」の当事者は、いかなる固有の語りを有するか。(B)同様に英国では、職域の「うつ」の当事者は、いかなる固有の語りを有するか。(C)英国では、精神医学と産業(精神)保健の枠組みが「うつ」の原因をいかに捉えているかである。 初年度は日本における三つのうつ病関連自助会における参与観察を行ってきた。年度下半期に渡英し、カーディフ大学社会科学部に客員研究員として所属し、在外研究を開始した。 初年度の研究成果については、大きく以下の三通りの場での発信を試みてきた。いずれも上記の問い(A)・(B)と関連している。(1)学会報告:日本保健医療社会学会大会および関西社会学会大会若手企画部会にて、「病いの語り」研究の理論的、方法論的、倫理的課題を論じる報告を行った。(2)論文:上記学会報告をもとに医療社会学分野の専門誌へ論文を投稿し受理された。(3)研究会報告:日本にて一度、英国にて二度、医療社会学ないし隣接分野の研究会にて関連の報告を行った。これらの成果発信は、翌年度より実施予定の英国でのフィールドワークの理論的基礎ともなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に記載の英国でのフィールドワークについては、渡英後にカーディフ大学社会科学部(英国での拠点研究機関)に提出した調査倫理審査申請書類の審査プロセスが当初の想定より長期にわたったため、開始するに至らなかった。(ただし初年度の研究終了直後に承認を得た。)本研究がいわゆる精神疾患圏にある状態を経験する人々を対象とする調査であることが、比較的倫理審査が厳格であると考えられる英国での審査に強く影響したためと考えられる。ただし、上述のように学会報告、論文、研究会報告を通した成果発信が当初の予定より多く行えたこと、および、同学部での研究者との間のネットワーク形成が進んだことから、翌年度に取り組み始めることを予定していた論文の草稿執筆を開始することができるなどの進捗もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
倫理審査を踏まえて、調査フィールドの関係者と適切な関係を築いた上で調査を開始し、引き続き研究を進める。並行してデータ分析を行い、成果の統合をし論文にまとめる。
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Research Products
(3 results)