2019 Fiscal Year Annual Research Report
職域における「うつ」のイベント構造分析――日英の比較から――
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18J00210
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Research Institution | Ryukoku University |
Research Fellow |
志水 洋人 龍谷大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | うつ / 語り / 職域 / 日本 / 英国 |
Outline of Annual Research Achievements |
日英におけるうつ病関連自助会での参与観察とインタビューを行う本研究の目的は、職域の「うつ」の語りに表れる事象間の連関構造の固有性を明らかにすることを通して、こころの病いの経験を捉える新たな視座を導出することである。具体的には、以下の三点を探っている。第一は、日本では職域の「うつ」の当事者は、いかなる固有の語りを有するか、である。第二に、英国では、職域の「うつ」の当事者は、いかなる固有の語りを有するかである。第三に、英国では、精神医学と産業(精神)保健の枠組みが「うつ」の原因をいかに捉えてきたか、である。 2019年度は、2018年度半ばより行っていた英国での在外研究を継続して実施した。カーディフ大学社会科学部に客員研究員として所属し、フィールドワーク、および学会報告等の成果発信を並行して行ってきた。フィールドワークについては、一つのうつ病関連自助会に7月から参加し、計12度の参与観察と5名への聞取り調査を行った。成果発信については以下の通りである。まず、論文執筆としては、本研究の方法論である「病いの語り」をテーマにした総説論文が国内専門誌に掲載されたほか、社会学誌での書評を執筆した。また、日本調査の分析をもとに国外専門誌に論文投稿した。学会報告としては、8月に医療社会学における国際比較と協同についてのシンポジウムを英国での所属機関にて開催したほか、9月に英国社会学会医療社会学部会にて文献研究をもとに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度中に計画の変更と、コロナウィルスの広がりによる情勢の変化があったことを踏まえて、現在までの進捗状況は「やや遅れている」とした。具体的には以下の理由による。まず、特別研究員採用中に制度変更があり、国外での在外研究期間の上限が延長されたことを受けて、英国での調査を部分的に2020年度に後ろ倒しし、2019年度の英国での研究は文献調査とこれまでの成果発信(論文執筆と学会報告)に重点を置いた。並行して行っていたフィールドワークについては、年度終盤のコロナウィルスの広がりにより調査を自粛することとなったが、研究計画全体として予定している3分の1程度のデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度半ばより再渡英する方向で計画を立ててきたが、外出・渡航制限については、日本側も英国側も今後の状況の変化が予測できないため、今後の研究の推進方策については柔軟に対応する。まず、英国での現地調査が2020年度中には行えない可能性をも加味し、以下三点の措置を検討する。第一に、フィールドワークをオンラインで行う可能性である。英国ではエピデミックを受けたヴァーチャルなエスノグラフィーの経験談とノウハウが社会学系のコミュニティで情報共有されつつあるのでこれを参考にする。第二に、収集するデータの種類を変更する可能性である。具体的には、英国で公開されている、二次分析可能な病いの語りデータベースを用いるか、出版済みの手記を用いることを検討している。第三に、分析方法・枠組みを修正することである。語りにみられる出来事の因果連関構造を主たる分析対象として念頭においてきたが、日英での比較可能性も考慮し、よりエスノグラフィックな仮説探究型の枠組みによって分析を行うことを検討している。 成果発信については、2020年度に開催予定の学会での報告が受理され準備を進めているほか、書籍の共同執筆を行い、査読論文の対応(修正・再投稿など)を行う。2020年度末までには、英国調査を終え、成果取りまとめを行うことを目標とする。
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Research Products
(5 results)