2018 Fiscal Year Annual Research Report
LMO関手の視点からみたスケイン代数による写像類群と有限型不変量の研究
Project/Area Number |
18J00305
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 俊輔 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | スケイン代数 / 写像類群 / 有限型不変量 / ジョンソン準同型 / 量子不変量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スケイン代数を用いて2次元トポロジーの研究と3次元トポロジーの研究とそれらの相互関係の研究を行うことである。スケイン代数は3次元トポロジーの側面では、一般の絡み目の量子不変量を曲面と閉区間の積空間の中の絡み目に拡張した概念である。2次元トポロジーの側面では、ゴールドマン・リー代数の量子化であると考えることができる。 ゴールドマン・リー代数の研究においては、デーン・ツイストの基本群の群環への作用をゴールドマン・リー代数の作用で記述する公式が需要な役割を担う。報告者の修士課程、博士課程の研究でHOMFLY-PTスケイン代数とカウフマン・ブラケット・スケイン代数においても類似の公式が存在することがわかった。スケイン代数の研究においても、このデーン・ツイストの公式が重要な役割を果たしている。2次元トポロジーの研究においては、デーン・ツイストの公式を用いて、写像類群の重要な部分群であるトレリ群からHOMFLY-PTスケイン代数とカウフマン・ブラケット・スケイン代数への埋め込みを構成した。3次元トポロジーにおいては、この埋め込みとへーガード分解を用いて整数係数ホモロジー球面の不変量を得た。この不変量は整数係数ホモロジー球面のもっとも基本的で重要なキャッソン不変量の情報も含んでいる。さらに、この不変量とこの埋め込みを用いて、森田氏により定義されたキャッソン核を再定義することができた。キャッソン核は森田氏の1990年代における写像類群とキャッソン不変量を結びつける研究の重要な研究成果である。カウフマン・ブラケット・スケイン代数を用いることにより、森田氏の1990年代における写像類群とキャッソン不変量を結びつける研究を再証明することが可能である。このように、スケイン代数は2次元トポロジーと3次元トポロジーを結びつける重要な研究課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果は、既存の不変量と報告者がスケイン代数をもちいて構成した不変量を結びつけることにより、報告者の研究と量子群の研究を結びつける研究成果である。半単純リー代数により、量子群を構成することができる。量子群をもちいて、絡み目の不変量や3次元多様体の不変量を構成することができる。例えば、sl(2)の量子群で構成される絡み目の不変量はカウフマン・ブラケットと一致し、sl(2)の量子群で構成される整数係数ホモロジー球面の級数不変量は大槻級数と呼ばれる。カウフマン・ブラケット・スケイン代数はカウフマン・ブラケットを拡張した概念であるため、カウフマン・ブラケット・スケイン代数で構成される不変量が大槻級数と一致すると予想されていたがその予想が正しいことを本年度の研究により示すことができた。またsl(n)で構成される絡み目の不変量の情報を全て合わせた不変量はHOMFLY-PT多項式とよばれる。HOMFLY-PTスケイン代数はHOMFLY-PT多項式を拡張したが概念である。HOMFLY-PTスケイン代数で構成される整数係数ホモロジー球面の不変量も同様にsl(n)の量子群で構成される不変量全ての情報を持っていることが本年度の研究により分かった。この応用として、スケイン代数で構成される不変量は写像類群とへーガード分解を用いて定義されるので、量子不変量と写像類軍の研究を結びつけることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果は、有限型不変量と写像類群の研究につながる研究である。有限型不変量と写像類群の研究は、森田氏の1990年代における写像類群とキャッソン不変量を結びつける研究により始まる。キャッソン不変量は1次の有限型不変量で、1次の有限型不変量はスカラー倍を除き一意に定まり、スカラー倍を除き大槻級数の1次の項と一致することが知られている。2次の有限型不変量も3次の有限型不変量もスカラー倍を除き一意に定まり、大槻級数の(1次の項で補正した)2次の項と大槻級数の(1次、2次の項で補正した)3次の項で一致することが知られている。このため、上記の研究成果を踏まえてカウフマン・ブラケット・スケイン代数を用いて、2次、3次の有限型不変量と写像類群の関係が明らかになることが期待される。4次の有限型不変量は線型独立な有限型不変量が二つ存在することが知られている。 今後の研究では、ジョンソン準同型と有限型不変量の関係を明らかにする。具体的には、カウフマン・ブラケット・スケイン代数を用いてジョンソン準同型と3次の有限型不変量の関係を明らかにする。さらに、4次の有限型不変量においては、カウフマン・ブラケット・スケイン代数は1変数のためこの二つの不変量を区別することができないが、HOMFLY-PT スケイン代数を用いてそれぞれの有限型不変量と写像類群の関係が明らかになることが期待される。この研究を通して、高次のキャッソン核が存在するかどうかを明らかにする。
|
Research Products
(6 results)