2018 Fiscal Year Annual Research Report
アオウミガメの個体数増加が藻場に与える生態学的インパクトの解明
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18J00353
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
浜端 朋子 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アオウミガメ / ゲノム / 集団構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず、北太平洋のアオウミガメについてゲノムワイドな変異情報を取得する方法について検討した。ゲノムワイドな変異情報を取得する手法は数多く開発されているが、アオウミガメは、リファレンスゲノムが公表されていることから、最も大規模にデータが取得できる全ゲノムリシーケンスを採用することとした。今年の産卵期に小笠原諸島で産卵メス個体から組織サンプリングを行い、高純度なゲノムDNAが採取できた10個体について次世代シーケンサー を用いて250塩基のペアエンドでショートリードを取得する条件でゲノムリシーケンスを実施した。この全ゲノムデータの取得については、先進ゲノム支援からのサポートも受けることができた。 さらに今後、日本より低緯度域の集団の個体についても、同様にゲノムリシーケンスを実施する。そのため、これら低緯度域の集団の個体もサンプルが必要であるが、これらの個体が、琉球列島の沿岸に摂餌のために来遊することが明らかになっているため、摂餌個体から低緯度集団個体を特定し、解析に使用することとした。個体の出生地域は、ミトコンドリアDNAのハプロタイプだけで特定可能な場合もあるが、広域分布するハプロタイプの存在により、特定するのが困難な場合も多い。そこで、ミトコンドリアDNAのハプロタイプ解析に加えMIG-seqを用いたSNPs解析によって、低緯度集団に由来する個体を確実に特定するために、八重山諸島沿岸で摂餌する個体について、それらの個体がどの集団にクラスタリングされるかを解析した。その結果、改良されたMIG-seq法により、1μlの低濃度DNAから数千のSNPsを得ることができ、ミトコンドリアDNAのハプロタイプ単体では観察できなかった集団構造が明らかになり、個体の出生地域の特定ができることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ゲノムワイドな変異情報を取得する方法を改めて検討し、当初の予定していたRAD-seqから全ゲノムリシーケンスに変更し、国内産個体のデータの取得まで行うことができた。また、日本よりも低緯度の産卵集団に由来する個体を特定するために、従来のミトコンドリアDNAハプロタイプ解析に加えて行ったMIG-seqでは、個体の産地特定を実現したことに加え、従来のミトコンドリアDNAのハプロタイプだけでは観察できなかった集団構造を明らかにすることもできた。これらの進捗から、予定されていたどおり進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムワイドな変異情報を用いて非モデル生物で過去の集団動態を理論的に復元する手法は、いくつも開発されているが、いずれの手法においてもSNPとして採用する変異に関して、高い確度が求められる。小笠原諸島の産卵個体で得られたリシーケンスデータについては、初年度に10個体からピークdepth 約×20のデータを得ているが、depthの低い領域の割合が比較的高いことから、現在のデータ量から増大させることが望ましいことが明らかになった。全10個体に対してデータの追加取得は、コストおよび計算リソース的に難しいため、今後、個体数を絞ってデータを追加取得していくことを検討する。 小笠原諸島の産卵個体のデータから、必要最低取得データ量、個体数、および変異解析の条件を検討したのち、八重山諸島沿岸の摂餌個体から特定された低緯度集団個体についてもゲノムリシーケンスも実施する予定である。 既に取得している変異情報から解析に着手し、内部集団構造の有無や計算リソース面から解析可能か否かなどによって、最適な解析手法を選択し、過去の集団動態を復元していく。
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Research Products
(4 results)