2019 Fiscal Year Annual Research Report
アオウミガメの個体数増加が藻場に与える生態学的インパクトの解明
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18J00353
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浜端 朋子 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アオウミガメ / ゲノム / 集団構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる本年度は、ミクロネシアまたはマーシャル諸島産と推定された4個体、東南アジア産と推定された3個体および、前年度取得データの拡充を図るため、小笠原の産卵個体2個体について追加でリシーケンスし、全17個体のゲノムデータを揃えた。これらの個体ごとのゲノムデータとpairwise sequentially Markovian coalescent (PSMC)モデルによって過去の個体数変動を推定したところ、北限の小笠原諸島の集団は、低緯度集団に比べて小さな有効集団サイズで推移したことが明らかになった。100万年から10万年前までの変化は地域間で同調し、地域固有の変化は見られなかった。 また、当初、小笠原諸島における1600年代から産卵上陸するメス個体をターゲットとした乱獲による産卵メスの個体数が激減は、数世代前に激しいボトルネックを受けた痕跡としてゲノムに広範囲にわたるホモ接合サイトが出現する形で顕在化すると予想していた。しかし、小笠原個体のゲノム全体の遺伝的多様性が著しく低下した痕跡はなかった。 この理由として、1)地域個体群間での遺伝子流動が遺伝的多様性の低下を防いでいる可能性、2)乱獲期にも捕獲のターゲットにされなかったオスの個体数が相当数維持されていた可能性が考えられた。実際に、MIG-seqのデータから、近年、周辺個体群との緩やかな遺伝子流動の存在を推定した結果や、餌場に集まる個体における小笠原産オスの割合の推定などからこれらの可能性が支持されている。 今年度は参加を予定していた国際学会が、コロナウイルス の感染拡大の影響で中止となってしまったため、口頭発表の計画は実現できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目となる今年度は、昨年度中に行ったMIG-seqにより得られたデータをもとに日本国内のアオウミガメ個体群のうち小笠原集団が歴史的に北限の独立集団であったことなどを確認したのち、小笠原諸島の追加リシーケンスデータと、東南アジア、ミクロネシア、マーシャル諸島などの地域に由来する個体を加えて、全17個体分の全ゲノムリシーケンスデータを揃えることができた。 個体ごとのゲノムデータについてP S M Cモデルによって過去の集団動態の変遷を推定したところ、集団サイズの変化に過去数十万年で地域的な大きな違いがないことが明らかになった。 乱獲を経験した小笠原の個体群で、ゲノムの遺伝的多様性が維持された理由として考えられる可能性を支持する補足データも収集することができた。過去の集団動態の解析についてはまだ未達成部分が残っているが、来年度にむけて改善点などが見えたため、概ね期待通り研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の集団動態の解析について、複数個体のゲノムデータを用いることで、より最近の集団サイズの変化を復元できる手法として開発されているMSMCなどの別の手法については、計算リソース上の限界が原因と思われる問題で解析できなかった。今後、これらの手法について、データ量の多い個体だけで試みる、リファレンスゲノムのうち長いscaffoldだけを用いて計算し直す、といった工夫を試みるとともに、他の新たな手法も試みることで結果を改善していく。 また、新たに遺伝子アノテーションを整備したリファレンスゲノムの公開が予定されており、それらのデータを用いて、小笠原集団特有の進化的側面について明らかにする解析も追加していく。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Significant loss of genetic diversity and accumulation of deleterious genetic variation in a critically endangered azalea species, Rhododendron boninense, growing on the Bonin Islands2020
Author(s)
Yuji Isagi, Takashi Makino, Tomoko Hamabata, Ping-Lin Cao, Satori Narita, Yoshiteru Komaki, Kazuki Kurita, Akiyo Naiki, Yoshiaki Kameyama, Toshiaki Kondo, Mayu Shibabayashi
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Journal Title
Plant Species Biology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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