2018 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of termite aggregation pheromone and the action/reception mechanisms
Project/Area Number |
18J00399
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
三高 雄希 京都工芸繊維大学, 研究戦略推進本部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 社会性昆虫 / シロアリ / 化学コミュニケーション / 集合フェロモン / GC-MS / 誘引 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会性昆虫は高度な化学コミュニケーションを発達させた昆虫であり、あらゆる社会行動にフェロモンが関わっていると古くから考えられてきたが、存在が予測されているフェロモンですらその大半は未同定のままである。社会性昆虫の中でも、シロアリは餌である朽木の内部に営巣しているが、各個体は朽木内に一様に分布せず、集中分布をしている。このことからシロアリは集合フェロモンを用いて集合することが予想されるが、これまで社会性昆虫で集合フェロモンを同定した例は無かった。本研究では、日本に広く分布するヤマトシロアリの集合行動に着目し、本種の集合フェロモンを同定し、その受容機構を解明することを目的とする。本年度はヤマトシロアリの集合フェロモン成分の同定を行なった。まず、本種のワーカーのヘキサン抽出液にワーカー誘引活性が見られたため、本抽出液をシリカゲルカラムクロマトグラムで分画したのち生物試験を行なった結果、無極性画分と微極性画分の両方に集合活性が見られた。次に、集合活性を示す成分の候補を絞り込むため、GC-MS分析、脂肪酸分析を行い、活性を示した分画に特異的に含まれていた化合物の同定を行なった結果、候補物質は芳香族化合物と炭化水素と脂肪酸とステロイドに絞られた。最後に、候補物質を人工的に合成した標品を用いて生物試験を行った結果、ヤマトシロアリの集合フェロモンは、芳香族炭化水素1種類、体表炭化水素成分2種類、長鎖脂肪酸2種類、ステロール1種類の合計6種類の成分からなることが分かった。また、芳香族炭化水素成分にはS体とR体の一対の光学異性体があるが、ワーカーにはS体とR体が2:1の割合で含まれていることも判明した。 本研究結果は社会性昆虫の集合行動を制御するメカニズムの理解に貢献するだけでなく、シロアリ誘引剤への応用可能なため、現在特許出願の準備を行なっている。また、論文の準備も並行して行なっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画として順調であったと言える。当初の予定通り、ヤマトシロアリの集合フェロモン成分の同定に成功し、芳香族化合物と長鎖の飽和炭化水素、脂肪酸、ステロイド化合物を含む6種類の化合物がフェロモンとして作用することが明らかとなった。本種ですでに同定されているフェロモンの多くが抗菌活性を持つ化合物であることから、集合フェロモンも抗菌活性を持つ化合物が用いられていると予想していたが、結果は異なり、昆虫にとって必須の栄養素や、木材の代謝産物の可能性がある化合物がフェロモンとして用いられていたことが判明した。このことから本種の集合フェロモンは、抗菌物質ではなく、余剰の栄養素をフェロモンに転用したことを示唆している。このことから、シロアリの集合行動は、シロアリの栄養要求や、腸内共生微生物の代謝産物と密接に関わるという知見が得られた。さらに、シロアリの集合フェロモン成分が特定されたことで、これまで存在しなかったシロアリ誘引剤の開発が可能となったため、シロアリ防除の観点から見ても、昨年度の研究結果は大きな成果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画については、まず、本研究で明らかとなった集合フェロモン成分の集合活性の持続時間を調べる。加えて、ワーカー以外のカースト、すなわち王や女王、兵蟻、羽蟻などにも有効か否かを検証する予定である。また、可能な限り近縁種のシロアリにも有効か否かも試験する。特にヤマトシロアリと近縁で、なおかつ世界中で木造建築物に被害を与えているイエシロアリについては、防除の観点からみても重要度が高いため、優先して試験する。さらに当初の計画通り、RNAiを用いたヤマトシロアリの化学受容体の機能解析も開始する。これらの実験と並行して、昨年度に得られた知見を特許、および論文として発表できるよう準備を行う。
|