2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子雲形成・進化・破壊と大質量星形成過程に基づいた銀河進化史の解明
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18J00508
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 将人 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 分子雲 / 超音速衝撃波 / 状態方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河の星間ガスは多相構造を成しており, その中でも星形成活動に主要な材料となるのは水素分子ガスの集合体である分子雲と呼ばれる天体である. 銀河の星形成活動を理解するにあたり,多相星間ガスの時間進化と分子雲の形成・進化・破壊を理解することが本質的に重要である. 近年の大規模な電波観測により,分子雲が大量に同定されその空間分布や物理的性質などの情報が得られ始めており, 分子雲の形成・進化・破壊の各素過程とこれらの情報を整合的に結びつける理論研究が求められている. 本年度はその一手法として, 衝突HI流のシミュレーション研究を集中的に実行した. これは銀河の暖かいHIガス(低密度・高温の水素原子ガス)から分子雲が形成される際に, 超音速衝撃波の伝播によって熱的不安定性を介した相転移が発生する過程を模擬したシミュレーションである. 本研究で主に以下5点の事項が解明された.1) 衝突流で形成される多相流体は冷却により断熱流体よりも圧縮され, 乱流状態が1000万年以上継続する. 2) 多相流体を1相流体と近似した場合, その実効的なポリトロピック指数は衝突速度とともに単調増加する. 電離領域の膨張や超新星残骸の膨張後期で期待される毎秒20キロメートル以下の速度においてはこの指数が1を下回り, 等温過程よりもさらに冷却する系と近似できる. 3) 多相流体中の暖かいガスと冷たいガスの質量比は一定ではなく時間発展する. 実際の銀河内では暖かいガスと冷たいガスの質量比はおおむね1対1であると考えられる. 4) 毎秒100キロメートル程度の高速衝突においても, 形成される冷たいガスの速度分散は毎秒10キロメートル程度にとどまる. 5) 計算の空間分解能依存性を調査した結果, 冷却過程と熱伝導過程の釣り合う典型的な空間スケールの10倍程度のスケールの時点で計算結果が収束している示唆を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内・国外発表を12回を行い,さらに国内研究機関におけるセミナー発表も2回行なった.また研究成果を論文1編として準備中である. 成果発表は次年度も継続し, すでに国外発表1回と国外研究機関でのセミナー発表1回の予定が決定している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで先行研究では本研究と同様な衝突流系の計算がほとんどであったが, 現実の系により即している一枚衝撃波の伝播過程を詳細に計算し, ALMA望遠鏡などの最新の観測研究との比較に値する乱流場の解析などを進める. 特に今後詳細に明らかになる可能性のある速度分散と質量分布の情報を提供し, 力学的エネルギーから乱流エネルギーへの変換効率も明らかにする. ここまでは主に分子雲の形成過程に注目していたいが, 破壊過程の計算も行うことで銀河の星形成効率の起源解明にも貢献する.
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Research Products
(12 results)