2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代の仏教儀礼と国家―東部ユーラシア史の視点から―
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18J00560
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
内田 敦士 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 御斎会 / 一切経 / 勘経 / 正倉院文書 / 称徳 / 法会 / 仏誕会 / 盂蘭盆会 |
Outline of Annual Research Achievements |
称徳朝の仏教政策について、御斎会の創始と疏の勘経を中心に分析を行い、以下の結論を得た。 御斎会は複数の宗派の僧侶が集まって、教学を競い合うことができる恒例の宮中講会であり、従来の護国法会とは異なる部分が多い。教学論争や階業など、僧侶たちと密接に関わる部分に大きな変化をもたらした点が重要である。御斎会創始以降、御斎会を中心とする形で法会体系が整備・再編されていき、従来の「花厳経為本」の一切経法会体制もその中に取り込まれた。平安初期の護国法会・階業整備の起点は、称徳朝における御斎会の創始であるとみることができる。 また、称徳朝では、従来は経の勘経にとどまっていたものを発展させ、疏の勘経を行った。奉写一切経司(奉写御執経所)は、造東大寺司からさまざまな経録を入手しており、どこに所属する経典を勘経に用いるのかを主体的に選択して作業を進めた。また、複数の写本を使って対校したケースもあったと推測できる。複数の写本を用いたことは、正確なテキストを追究するレベルの高い校訂作業が行われたことの証左であるといえよう。これらの作業は、僧侶たちの教学の発展に寄与したと思われる。以上の成果は、仙台古代史懇話会と仏教史学会学術大会で発表した。 また、仏誕会と盂蘭盆会に関する史料と先行研究の収集・読解を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
称徳朝の仏教政策に関する研究成果を、仙台古代史懇話会と仏教史学会学術大会で発表することができたが、論文公表には至らなかった。また、次年度に行う仏誕会・盂蘭盆会の研究の基礎的な準備を進めることができた。以上を総合的に判断して、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
仏誕会と盂蘭盆会の研究を進める。特に行像や安居との関係に注目し、朝鮮半島や中国だけではなく、中央アジアやインドも視野に入れて分析を行うことで、日本の仏誕会と盂蘭盆会の特色を明らかにしたい。成果は国史談話会等で発表する。
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Research Products
(2 results)