2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代の仏教儀礼と国家―東部ユーラシア史の視点から―
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18J00560
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 敦士 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 平安時代 / 宮廷社会 / 灌仏会 / 清涼殿 / 南海寄帰内法伝 / 大宋僧史略 / 百済寺院 / 仏舎利 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)日本古代の灌仏会とその源流 灌仏会とは、毎年四月八日、釈迦の仏像に香水を灌ぎ、釈迦の誕生を祝う仏教儀礼である。日本では七世紀以降、多くの寺院で行われた。本研究では、灌仏会の中でも、内裏の清涼殿で行われた灌仏会であり、史料が比較的多く残っている御灌仏に注目した。『延喜式』の規定や、『西宮記』『北山抄』『江家次第』などの儀式書を読み解くことで、御灌仏の鋪設・儀式次第を明らかにするとともに、宮廷社会における意義について考察した。 さらに、中国やインドの灌仏との関係についても検討した。灌仏関係の経典(『仏説摩訶刹頭経』『仏説浴像功徳経』『浴仏功徳経』)や『荊楚歳時記』『南海寄帰内法伝』『大宋僧史略』などの史料を分析することで、インド・中国・日本の共通点と相違点を明らかにした。
(2)百済寺院と仏舎利 2019年9月18日から21日にかけて韓国での調査を行い、百済の王興寺跡や弥勒寺跡を踏査するとともに、出土した舎利荘厳具等を見学した。そこで得られた知見を踏まえて、東部ユーラシアにおける舎利信仰と王権との関係について、朝鮮半島の事例だけではなく、インド・マウリヤ朝のアショーカ王、スリランカ・キャンディの仏歯精舎、梁の武帝や陳の武帝の舎利供養、隋の文帝の仁寿舎利塔、日本の飛鳥寺など、史料が残っているいくつかの事例を検討した。また、日本の国分寺についても、舎利信仰と王権の枠組みで捉える視角を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本古代の灌仏会やその源流に関する研究成果を、国内・国際学会で発表することができた。当初予定していた盂蘭盆会に関しては、十分な検討ができなかったが、韓国踏査を契機として、仏舎利に関する研究が進んだことは幸いであった。また、インドや中国・朝鮮半島などの仏教儀礼全般について、史料収集を進めることができた。以上のことから判断して、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
灌仏会については依然として不明な点があり、引き続き史料収集・分析を行うとともに、盂蘭盆会と追善法会の研究を合わせて進めていきたい。正倉院文書にあらわれる章疏類についても分析を深め、教学と儀礼の相互関係を明らかにする。
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Research Products
(5 results)