2018 Fiscal Year Annual Research Report
内生的技術進歩が出生行動へ与える影響と特許・研究開発の質に関する研究
Project/Area Number |
18J00631
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
金原 大植 神戸大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | R&D / 製品差別化 / 輸送価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はR&Dの質に関する研究に関しては,実証分析に用いる特許データに関して,株式会社人工生命研究所が提供している日本の特許データベースを導入し,RDDを用いた分析を行うための前段階として,データの検証を行った. また国際経済学の文脈でR&Dによる製品差別化がR&Dを行うセクターと戦略的関係にある輸送企業の価格設定に与える影響を分析したものである.具体的には,輸送価格は輸送企業の利潤最大化に基づくと仮定した3段階ゲームを用いて,製品差別化の度合い及び,難易度が輸送価格に与える影響を分析した.その結果,製品差別化の度合いの高さと難易度の高さの両方が輸送価格を低下させる事が得られた.この結果は輸送価格の低下が差別化財の需要を増加させる効果が,輸送価格の低下が輸送企業の単位当たり利潤を上回ることから生じたものである.本研究は複数の国際学会(WEAI,SERC)に採択されており,新年度初頭に英文査読誌に投稿予定である.なお本研究は亀井慶太氏(西南学院大学)と共同で実施したものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施する予定だった出生率を内生化したモデルに関する研究に関しては,その元となる研究の完成が遅れている影響もあり,十分な成果が得られなかったものに,新たに取り組んだ国際経済学の文脈における製品差別化R&Dの効果に関する研究に関して大きな進捗を得たため.
|
Strategy for Future Research Activity |
出生率を内生化したモデルで,成長要因の相互作用と政策の効果を分析する研究においてはR&DR&DサイクルモデルにBecker and Barro (1988)で定式化された出生率を内生化した世代重複(OLG)モデルの設定を導入する.その上で,長期平均的には出生率は単調なトレンドを持って推移するが,R&Dサイクル内で比較的高い成長率を経験した世代の出生率と,比較的低い成長率を経験した世代の出生率を比較すると,世代間で一時的な出生率の変化の揺り戻しが生じる事を示す. R&Dと研究開発の質に関しては実証分析を行うためのデータの整理を行うと共に,分析の礎となる理論モデルの洗練し,特に均斉成長経路だけでなく移行過程においてどのような挙動が生じるかを分析可能なモデルを構築する. 国際経済学における,R&DがR&Dを行うセクターと戦略的関係にある輸送企業の価格設定に与える影響に関しては,輸送企業においてもコスト削減型のR&Dを行う状況を扱い,戦略的関係にある各セクターのR&Dがもう一方のセクターのR&Dにどのような影響を与えるかに関して分析を行う.
|