2019 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦体制下における韓国・沖縄関係ー在沖コリアン問題を中心に
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18J00693
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
成田 千尋 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 在沖コリアン / 沖縄返還 / 在沖韓国領事館 / 韓国人慰霊塔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二次世界大戦前後に朝鮮半島出身者が沖縄に定住し、社会から忘却され、沖縄返還が実現に至る過程で発見されるまでの経緯について、冷戦体制下における米国の沖縄の排他的統治が韓国と沖縄の関係に与えた影響に焦点を当て、明らかにすることである。2019年度は、主に①沖縄への韓国領事館建設及び在沖コリアンの法的地位の変化、②返還後に実施された沖縄県糸満市への韓国人慰霊塔建設に焦点を当て、沖縄返還が在沖コリアンに与えた影響について検討した。また、次年度に向けての史資料収集を実施した他、前年度の課題の論文化及び韓国語への翻訳作業を行った。
①沖縄への韓国領事館建設及び在沖コリアンの法的地位の変化については、沖縄返還が決定される過程において、在沖コリアンの地位問題が決定された経緯及び、1973年に那覇に韓国領事館が建設された意図・経緯について検討した。史料については、収集済みの史料を精査した後、韓国及び日本の国会図書館、外交史料館などで課題に関わる史資料の収集を行い、分析を行った。成果の一部については、前年度に検討した1950 年代から 60 年代にかけての韓国政府及び中華民国政府の沖縄との交易をめぐる動向と併せ、チェコで開催された第14回コリア学国際学術討論会で報告を行い、『国際高麗学(韓国語)』に投稿した。
②沖縄県糸満市の韓国人慰霊塔建設については、沖縄返還後、1975年に沖縄県糸満市に韓国人慰霊塔が建設された意図及び経緯について検討した。韓国外交史料館で収集した韓国人慰霊塔に関する史料を精査した後、沖縄県公文書館、沖縄県立図書館、国会図書館、滋賀県立大学の朴慶植文庫などで課題に関わる追加的な史料の収集を行い、成果を東京で開催された同時代史学会2019年度大会で報告した。最終的な成果については、論文集の一部として来年度に出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年中は、予定していた沖縄、米国、韓国、東京での史料調査を実施できた他、成果を学会で2度報告し、学術論文の形で公表できるめどが立ったため。2020年2月以降は、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた沖縄及び韓国での調査を実施することができなくなり、研究の進捗にやや遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、次年度に向けた準備として、沖縄に連行された朝鮮人軍属の動向について在野で調査・研究されている「恨之碑の会」の、日韓双方の関係者と情報交換を行った。これに加え、沖縄に連行され、生還した朝鮮人軍属の団体(太平洋同志会及び太平洋戦争犠牲者遺族会慶尚北道英陽郡支会など)が、韓国の慶山郡及び英陽郡に建立した慰霊碑を視察し、知見を広げた。また、米国の国立公文書館及びアイゼンハワー大統領図書館、沖縄県公文書館などで、在沖コリアンの起源及び米国の出入域管理政策に関する追加的な史料収集を行った。次年度は、新型コロナウイルス感染症の収束状況にもよるが、これらの準備作業の成果を活かすとともに、収集済みの史料の調査・分析に注力し、可能な限り計画通りに研究を遂行することを目指す。
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