2018 Fiscal Year Annual Research Report
ラテンアメリカ文学・美術における酒井和也の役割と日本文化紹介に関する研究
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18J00829
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 佳奈 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ラテンアメリカ文学 / 日本文学 / 翻訳 / ラテンアメリカ美術 / 移民 / 日系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、酒井和也が活躍した時代のラテンアメリカ文学・美術について、先行研究をはじめとする関連資料を読み進めることから着手した。その一環として、2018年5月に松籟社から出版された久野量一氏の『島の「重さ」をめぐって――キューバの文学を読む』の合評会を開催し、世話人を務めた(7月28日、東京外国語大学本郷サテライト)。キューバの文学を論じた初の日本語研究書である本書について、著者と5名のコメンテーターを招いて活発な議論が行われた。 並行して、国立国会図書館にてアルゼンチンの日本語新聞を調査した。特に1950~60年代の日本文化関連イベントに関する記事を調べ、日本大使館や日系団体のみならず、非日系アルゼンチン人も日本文化紹介に積極的に関わっていたことを明らかにした。またメキシコのラジオ局Radio Educacionと連絡を取り、酒井がパーソナリティを務めていた音楽番組の、新たにデジタル化された音声データを入手することが出来た。 更に、2016年に行ったドナルド・キーン氏への日本語インタビューをスペイン語に翻訳し、メキシコの文芸雑誌『レトラス・リブレス(Letras Libres)』に掲載予定である。同誌は酒井が編集に関わった『プルラル(Plural)』、『ブエルタ(Vuelta)』の後継とも言える雑誌である。メキシコで教えた経験があり、酒井をよく知るキーン氏の貴重な証言を同誌で発表できたことは非常に有意義であった。なお、翻訳に際してアウレリオ・アシアイン氏の多大な協力を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年2月に出産し、4月まで研究を中断予定である。そのため、当初予定していた米国プリンストン大学での調査を延期せざるを得なかった。そこで本年度は国内で入手可能な日本語資料や音声データの収集、分析を行った。酒井の翻訳テクストの比較は進んでおらず、計画にやや遅れが生じているが、ドナルド・キーン氏へのインタビューを翻訳するなど、一定の成果を残すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は酒井の翻訳テクストの比較、分析を進め、論文を執筆する。また、出産・育児のために延期していた米国プリンストン大学への調査を2020年3月に実施予定である。目的は、同大学が所蔵する『プルラル』編集部の書簡類閲覧である。その下準備として『プルラル』に掲載された記事を見直し、その傾向、国内外の寄稿者とのつながりや、編集長、アートディレクターとしての酒井の役割について明らかにする。
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Research Products
(2 results)