2019 Fiscal Year Annual Research Report
大恐慌期の経済と外交――英米金融対立とヨーロッパ国際秩序の破綻、1931-35年
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18J00835
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤山 一樹 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 国際政治経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度はおおむね研究計画に沿って、史資料の収集と論文執筆の準備を行った。 本年度はアメリカで本研究の中核となる史料を引き続き収集した。ワシントンDCのアメリカ議会図書館に所蔵されるハーバート・ファイス(国務省経済問題担当補佐官)、ノーマン・デイヴィス(ジュネーヴ軍縮会議アメリカ代表)、オグデン・ミルズ(フーヴァー政権財務長官)、コーデル・ハル(フランクリン・ローズヴェルト政権国務長官)の個人文書をそれぞれ調査し、金融危機が欧米主要国を相次いで襲った1931年から、経済問題をめぐる国際的解決策を模索して失敗に終わった1933年のロンドン世界経済会議にかけての、アメリカ政府の戦債・通貨・軍縮政策に関する一次史料を収集することができた。 昨年度からの史料調査を踏まえた上で、令和2年1月には受入研究室内で研究の途中報告を行った。日英米の先行研究を整理し、大恐慌下の国際経済ならびに国際政治の連動メカニズムを実証することの学問的意義を指摘した上で、1932年末、アメリカのフーヴァー大統領がロンドン世界経済会議への参加にあたり形成した、戦債・軍縮・通貨をめぐる包括的政策構想を、フーヴァー大統領図書館に所蔵された一次史料を中心に分析した。 中長期的には、①英米の世界経済秩序構想、②経済と安全保障を連関させた媒介的争点、③各国の政策決定過程におけるテクノクラートと政治家の相克にそれぞれ着目しつつ、1930年代前半を通じて英米関係が国際レベルではヨーロッパ安全保障問題、国内レベルでは納税者世論という要因によって二重に圧搾され、大国協調の選択肢を次第に狭めていく過程を実証することが目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカにおいて当初予定したほどの長さで史料調査を行うことはできなかったが、効率的な調査を心がけた結果、当面の研究対象であるフーヴァー政権後期の主要私文書については大方完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の短期的な研究課題は、フーヴァー大統領個人の政策構想がスティムソン国務長官をはじめとする主要閣僚にどの程度共有されていたのか、フーヴァーは自身の構想の実現をどの程度真剣に検討していたのか、またフーヴァーの構想を拒絶した次期大統領ローズヴェルトの政策構想はいかなるものだったのかを明らかにすることである。
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Research Products
(2 results)