2018 Fiscal Year Annual Research Report
金融市場の発達と銀行規制のマクロ経済の安定性および社会的厚生への影響
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18J00878
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須永 美穂 京都大学, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 金融市場の発達 / 自己資本比率規制 / マクロ経済 / リスク回避 / 少子高齢化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究成果は、以下の3点にまとめることができる。 1.私がこれまで行ってきた研究(論文"Capital Adequacy Requirements and Financial Frictions in a Neoclassical Growth Model")を引き続き進めた。本研究では、近年のBasel III導入による更なる規制強化を踏まえ、自己資本比率規制を導入した経済成長モデルを構築し、自己資本比率規制の強化は金融市場が発達した経済において必ずしも望ましくないという結果を得た。現在、本論文の改訂を行い、国際学術誌に投稿中である。
2.企業によって異なる生産技術と担保制約に直面する経済における銀行と株式市場の機能をモデル化した。構築したマクロ経済モデルを用いて、企業の技術水準が各々の担保制約に与える影響を通じて、金融システムの変遷とマクロ経済の変動がもたらされることを示した。本研究は、論文"Credit Constraints, Financial Intermediaries, and Heterogenous Firms"として、国内のworkshopで報告を行った。
3.リスク回避度が異なる各世代の金融市場での貯蓄投資行動を通して、少子高齢化がマクロ経済に与える影響を、理論的に分析した。構築したモデルから、若年世代よりも老年世代がリスク回避的であればあるほど、少子高齢化が資本蓄積を阻害するという結果を得た。本研究は、国内のconferenceで、論文"Population Aging and Economic Growth in an Overlapping Generations Model"として、また、少し改訂を行い、論文"Risk Aversion, Population Aging, and Economic Growth"として、報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、研究計画通り、研究実績の1.及び2.で述べたように、金融市場の発達度合いと、自己資本比率規制がマクロ経済に与える影響に関する研究を行い、2つのモデルの構築と構築したモデルから上述したような結果を得ることができた。また、そのうち一つは、国際学術誌に投稿することができた。加えて、研究実績の概要3で述べたように、リスク資産に対する態度が異なる各世代(老年・若年)の金融市場における貯蓄投資行動を通して、少子高齢化がマクロ経済に与える影響についてのマクロ経済モデルを構築し、構築したモデルから得られた結果(概要3)を、国内のコンファレンスで研究報告を行うことができた。以上の理由から、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究では、研究概要2と3の研究に注力する。 研究概要2の研究(企業の生産技術水準、担保制約、及び、マクロ経済の安定性に関する 研究)については、さらに、人々の豊かさの指標となる社会的な厚生の水準を高くするために、望ましい規制や政策を導出することを目的として、研究を遂行する。今後は、上記研究で構築したモデルとその結果の水準をより高めるべく、国内外での学会報告を重ね、最終的には国際学術誌投稿を行うことを目標とする。 研究概要3の研究(各世代の金融市場におけるリスク資産に対する態度と少子高齢化に関するマクロ経済モデル)については、現実経済とどのくらい符合するのか、また、モデルから得られた結果が現実経済に与える示唆をより鮮明に伝えるべく、数値を用いたシミュレーション分析を行う予定である。また、概要2と同様、国内外での学会報告を重ね、最終的には国際学術誌投稿を行うことを目標とする。
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