2019 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期の東国・畿内地域における顕密・禅宗寺院の展開と武家
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18J00893
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小池 勝也 埼玉大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 中世東国 / 鶴岡八幡宮寺 / 醍醐寺 / 理性院 / 勝長寿院 / 日光山 / 安堵 / 補任 |
Outline of Annual Research Achievements |
①応永年間の東国寺社別当職の補任安堵問題についての研究…「中世東国寺社別当職をめ ぐる僧俗の都部関係」 (『歴史学研究』980号)の補論として、応永年間(1394~1427)の 東国寺社別当職の補任・ 安堵の事例を概観したうえで、室町幕府の介入は、受益者が畿内にいる場合などの事例に限定されることなどを明らかにした。検討の成果は、「応永年間における東国寺社諸職の安堵について」(『室町遺文第2巻 月報』) にまとめた。
②中世東国の門跡についての検討…中世の東国寺院にも「門跡」と呼べる存在がいるのかを検討した。その結果、鎌倉の勝長寿院 (大御堂)については、畿内 側の史料にも勝長寿院別当を「大御堂門跡」と呼称する史料がみられ、入室者も天皇・摂関家・足利家の人物に 限定されることから、門跡と呼称できる地位にあると判断した。鶴岡人幡宮寺別当を始め、他にも東国側の史料 では「門跡」と呼称された存在がいるが、これらは鎌倉府政権下の宗教秩序でのみ通用する格式ではなかったかと見通した。検討の成果は、「中世東国における『門跡』」(日 本宗教史懇話会サマーセミナー研究報告)として口頭報告した
③醍醐寺理性院流の検討…兼ねてよりの検討対象である中世醍醐寺に関して、理性院という院家およびこ の院家を中核とする理性院流という法脈の展開過程を検討した。そのさい、理性院流相伝の大法とされる太元法と理性院の関係がどのように形成されたかに特に留意した。その結果、鎌倉期の理性院流僧は、太元法でなく御産祈祷を中核的な祈祷に位置付けていたこと、それが南北朝期の院主である宗助の時代に 画期があり、太元法と理性院流の関係が密接になっていくことを指摘した。検討の成果は「中世における醍醐寺 理性院流の展開と太元法」(『 寺院史研究』第16号、2020年7月刊行予定、査読あり)として発表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中世の東国については、鎌倉期~戦国期まで中世を通した検討を行い、昨年は多くの口頭報告を行い、本年はそれらを成稿する段階に来ている。 中世の畿内寺院についても、醍醐寺を中心に研究成果を発表できているが、禅宗寺院についてはまだこれといった研究成果を出せていない点が課題である。今後は、禅宗寺院の検討に特に力を入れていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
①東西禅僧の交流についての検討…室町、戦国期の京・鎌倉の禅宗僧の往来・交流の実態について、古記録などをもとに検討する。
②鎌倉幕府と室町幕府・鎌倉府の宗教秩序の比較検討…鎌倉幕府の宗教政策をすでに検討を進めている、室町幕府・鎌倉府の宗教秩序と比較検討することで、室町幕府の武家政権が、先行する鎌倉幕府が構築した宗教秩序をどのように継承もしくは克服していくのかを検討する。
③小田原北条氏~江戸幕府初期の宗教秩序の検討…戦国期から江戸初期にかけての関東の宗教秩序を検討し、中世東国の宗教秩序がどのように変化していくのかを検討する。
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Research Products
(6 results)