2019 Fiscal Year Annual Research Report
4D Imaging-based Analysis of Segregation Errors of individually labeled Chromosomes in Mouse Oocytes
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18J01017
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹之内 修 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 染色体 / 染色体分配 / 卵母細胞 / CRISPR / イメージング / 老化 / 微小管 / 紡錘体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、①全染色体の標識の実現、②染色効率の最大化を行った。 本研究では、マウス卵母細胞内の20種の染色体(1-19番およびX染色体)を同定する必要がある。しかし、生きた卵母細胞に適した同定技術はいまだ確立されていない。そこで、新規DNA配列標識技術CRISPR-Siriusを用いて、染色体の識別を行った。 マウスのゲノム情報を基に、CRISPR-Siriusで標識可能なDNA配列を検証した結果、マウス卵母細胞内の全ての染色体をそれぞれ標識可能なsgRNAを見つけることに成功した。さらに、標識の特異性を検証するべく、個々の染色体上に存在する2種の異なる配列を、異なる波長の蛍光タンパク質でそれぞれ標識した。結果、2色の蛍光スポットが1つの染色体上で観察され、目的の染色体を正しく標識できていることが確認できた。これらの結果より、CRISPR-Siriusが染色体同定に極めて有用であることが証明された。 次に、染色効率の改善を行った。これまでCRISPR-Siriusを構築するタンパク質群をコードするmRNAを卵母細胞に打ち込んでいたが、あらかじめ精製したタンパク質群を打ち込むことで標識効率が劇的に改善することが判明した。 最後に、CRISPR-Siriusを用いて、全ての染色体の紡錘体内部の局在を解析した。結果、小さい染色体ほど紡錘体の内側に、大きい染色体ほど外側に局在することが判明した。上記の結果は、染色体ごとに紡錘体内の適切な配置が決められている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、全ての染色体を安定的に同定することに大きなハードルがあると考えられた。しかし本年度、240種の配列をひとつひとつ実験で標識可能か確かめた結果、マウス卵母細胞内の20種の染色体それぞれを安定的に染色することに成功した。今年度の結果によって、本研究の実現可能性が高まった。さらに、個々の染色体の紡錘体内の局在が異なることも明らかになっており、染色体動態が個々の染色体で異なる可能性は高いと考えられる。次年度において、動態の細かな違いやその生物学的重要性を明らかにすることで、大きな意義のある研究になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、正常な卵母細胞における各染色体と動原体の挙動を解析する。 【微小管接合のタイミング】 微小管接合前の染色体は曲がった形状をとるが、接合後は張力を受けて直線状に変化する。染色体の嵩高さや動原体構造の違いによって、接合のタイミングが異なる可能性が考えられる。染色体の形状や動原体間の距離の変化から、各染色体の接合のタイミングを検証する。 【微小管接合の方式と接合回数】 染色体と動原体の接合には様々な方式が存在する。そこで免疫染色法によって、各染色体でとりやすい接合方式が存在するか検証する。また、間違った微小管接合は、動原体上に局在するキナーゼの活性によって解消される。その際、張力のバランスが崩れ、動原体間の距離が縮まる。一方、再接合によってふたたび張力がかかり、動原体間の距離は広がる。動原体間の距離を指標に、各染色体の接合回数を検証する。また、キナーゼの活性阻害剤を利用して、各染色体の動態の変化を検証する。 【張力】 染色体への張力を測定可能なFRETプローブを利用し、紡錘体内の局所的な張力変化を解析する。 最後に、老化した卵母細胞における染色体動態の解析を行う。また、正常な卵母細胞を老化状態に誘導するアプローチを行い、各染色体への影響を実際に老化した卵母細胞と比較する。
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