2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J01237
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
太田 和惟 慶應義塾大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 岩澤理論 / 志村曲線 / Heegner サイクル / p進L関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として、志村曲線の内でも特に重要なクラスと言えるモジュラー曲線に付随するHeegnerサイクルのp進変形について研究を行い成果を得られた。より具体的には、Howardが既に構成していた、肥田変形に対するbig Heegner点が、Heegnerサイクルを補間していることを証明することに成功した(肥田変形とは大雑把に言えば、楕円保型形式のp進変形で、Heegnerサイクルが各楕円保型形式に対して構成されているオイラー系であることから、これらの関係を明らかにすることが望まれていた)。このような研究はすでに、Castellaによる先行研究があったが、 彼とは異なる手法を用いることで、仮定を弱めることができた。Castellaの手法はp進ホッジ理論に強く依存しており、考える保型形式に付随するガロワ表現に局所的な仮定を課していたが、本研究では大域的な代数幾何的手法を用いることでその仮定を外すことができた。さらに、本年度の研究を通じて、オイラー系の構成・研究で非常に重要な役割を果たす代数的サイクルやアーベルヤコビ写像についても知見を深めることができた。このような知見を得られたことは、一般の志村曲線だけでなく他の志村多様体上のオイラー系を研究する際にも確実に役立つと考えられる。 今回得られた研究成果に関する論文の執筆はすでに開始し、6割ほど完成したと言ってよい状況である。また、この成果をKIAS Number Theory Seminar で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって、志村曲線上のオイラー系の知見を大幅に深めることができ、順調にステップを踏んでいる。また実際の応用として、Castellaが既に得ていた、虚数乗法をもつ楕円曲線のテイト加群と二次元アルティン表現とのテンソル積から定まるガロワ表現のTate-Shafarevich 群の有限性に関する結果の仮定を弱めることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、本年度得られた成果に関する論文を早急に完成させ、学術雑誌に投稿することを目指す。その後、本年度に得られた成果を、より一般の志村曲線に一般化する研究と、虚数乗法をもつ楕円曲線のテイト加群と二次元アルティン表現とのテンソル積のBSD予想の階数部分について研究する。並行して、アーベル多様体や志村多様体、岩澤理論の研究集会に参加し情報収集を行う。また、専門家や共同研究者たちとの研究討論を積極的に行うことで、研究を推し進めて行くと同時に新たな研究を模索していく。
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Research Products
(1 results)