2018 Fiscal Year Annual Research Report
ファイバー構造と接触・シンプレクティック多様体の研究
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18J01373
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大場 貴裕 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Lefschetz-Bottファイバー空間 / 接触多様体 / シンプレクティック多様体 / シンプレクティック充填 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、接触・シンプレクティック多様体が許容するファイバー構造の解明と、この構造を用いたそれらの多様体の幾何学的性質解明を目的としている。本年度はLefschetz-Bottファイバー空間というファイバー構造の研究を行った。 接触多様体のシンプレクティック充填の研究にはこれまでLefschetzファイバー空間というファイバー構造が用いられてきた。この場合、対応するシンプレクティック充填のクラスはStein充填というクラスであり、充填全体の中では狭いクラスであることが知られている。より広いクラスを扱うべく、報告者はLefschetz-Bottファイバー空間をシンプレクティック充填の研究に導入した。まず、Lefschetz-Bottファイバー空間の全空間は、境界の接触多様体の強い意味でのシンプレクティック充填になることを示した。これにより、このファイバー空間の有用性が明らかとなった。また、これまでLefschetz-Bottファイバー空間を許容するシンプレクティック多様体の具体例はほとんど知られていなかった。本研究で、閉シンプレクティック多様体上の前量子化直線束がLefschetz-Bottファイバー空間の構造を許容することを示した。この結果と、強シンプレクティック充填との対応関係を用い、高次元のA型特異点のリンクと呼ばれる接触多様体について、その強シンプレクティック充填を複数個構成した。これは低次元の場合と異なる結果であり興味深い。本結果は論文にまとめてあり、プレプリントとしてオンライン上(arXiv)で公開している。 研究協力者のM. Kwon氏(ドイツ・Giessen大学)に2ヶ月半ほど日本に滞在してもらい、Lefschetz-Bottファイバー空間などについて集中的に議論を行った。議論からこのファイバー構造の更なる応用例を考案することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたLefschetz-Bottファイバー空間のハンドル分解の解明には至らなかったものの、Lefschetz-Bottファイバー空間を許容するシンプレクティック多様体の具体例を与えこのファイバー構造に関する理解を深めた。さらにこのファイバー構造の強シンプレクティック充填への応用を明らかにしたことでその有用性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「平成31年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)交付申請書」に記載した計画に沿い、本研究課題に関する研究活動を続ける。特に平成30年度に完成できなかった、Lefschetz-Bottファイバー空間のハンドル分解に関しては、最も単純と考えられる余次元が大きい場合に限定して研究を進め完成を目指す。 研究協力者と集中的に議論ができる機会をもつ。そのため、M.Kwon氏の元へは2ヶ月間ほど滞在する。さらに、国内外から研究者を京都大学に招へいし、ワークショップを開催しお互いの研究の深化を図る。
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