2018 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア未来派における機械と身体の融合としての〈踊る身体〉の表象分析
Project/Area Number |
18J01717
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横田 さやか 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 未来派 / 表象文化論 / 舞踊学 / イタリア / 身体 / 機械 / テクノロジー / 知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる平成30年度は、一次資料の調査分析を研究活動の主軸に据えた。並行して、論文執筆を進め、研究発表を行った。一次資料の調査分析を進める一方で、日本の学術界における現行の未来派解釈に新たな視点を提示し、報告者の研究背景にある最新の未来派定義を共有することが急務であると実感された。その為、関連する先行研究の未来派の定義を年代順に総括し、近年共通見解とされた解釈を説明する論文(仮題「イタリア未来派研究の展開と定義の変遷を巡る考察」)執筆に取り組んだ。 また、機械と身体の融合としての〈踊る身体の表象分析〉について議論を深める布石として、20世紀初頭イタリアの舞踊史を背景とした身体表象分析を行い、舞踊研究会においてその成果を発表した。【舞踊研究会、発表題目「未来派・飛行機・ダンス-20世紀初頭イタリアにおける舞踊の革新-」、口頭発表、2018年11月8日(専修大学神田キャンパス)】 さらに、本研究を通して実現する成果のひとつに、国際的な研究成果発表を課題として挙げていた。それに対し、本年度はボローニャ大学にて開催された国際学術会議にて研究発表を行い、オリジナリティーと綿密な一次資料の調査分析の成果において高い評価を得た。【ボローニャ大学芸術学科主催国際学術会議"La danza in Italia nel Novecento e oltre: teorie, pratiche, identita'"(イタリアにおける20世紀とそれ以降の舞踊:セオリー、プラクティス、アイデンティティー)、発表題目:"Le danze aeree immaginarie e praticate agli albori dell'aviazione italiana"(「イタリア航空技術黎明期における空想の航空ダンスと実演された航空ダンス」)、口頭発表(イタリア語)、2019年3月28日】。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に実施した研究は、舞踊研究を主軸に実施したこれまでの研究成果を活かし、イタリア未来派の事例と理想的身体イメージの展開を表象文化論の観点から分析を行う初期段階にあたる。よって、本年度の研究は、未来派・飛行機・ダンスをキーワードとして展開し、〈踊る身体の表象分析〉を論じる基盤を築いたといえる。具体的には、初年度の最重要課題であった一次資料の調査分析を実施し、研究発表の成果に表すことができた。国内と国外における研究発表の実現は、海外渡航調査として、イタリア国内のアーカイヴや図書館、研究所などにおいて作業に従事した成果である。トレント・ロヴェレート近現代美術館付属20世紀アーカイヴ(ロヴェレート)をはじめとし、ボローニャ大学芸術学科附属図書館、パッリ・エミリア20世紀歴史記憶研究所などのボローニャの図書館、資料館などを資料閲覧、調査作業の対象とし、一次資料の調査を実施した。並行して、関連領域のシンポジウムや学会、研究会へ積極的に出席した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、身体とテクノロジーをめぐる普遍的命題に対し、イタリア未来派の事例を通して有効な議論を開くことにある。未来派が追究した身体イメージは、生物学的身体の進化論と自然の人工的再構築の両理論から発していた。この展開を表象文化論の観点から分析する手法をとることで、近年の自然科学と人文社会科学とをまたいだ研究の発展にも寄与することを目指す。初年度は、一次資料をくまなく調査し、論拠を強固なものとする基盤を築いた。それを踏まえ、今後の課題は、機械崇拝が優勢であり身体性は排除されたと端的に解釈する傾向にある未来派定義の空白を指摘し、未来派芸術においては、むしろ、体験に基づく身体感覚への気づきが精神性や感性を包括する身体芸術の可能性を開いた特徴を明らかにすることにある。とりわけ、2年目となる平成31年度は、「身体感覚」や「知覚」をキーワードに据えた考察を展開する。 加えて、一次資料の調査分析を継続する。初年度の調査成果を踏まえ、イタリア国外を対象に行う(イエール大学図書館内Beinecke Rare Book & Manuscript Libraryにて、Marinettiの未公開手書き原稿等を、ニューヨーク公立図書館内Cia Fornaroli Collection, Walter Toscanini Collectionにて、19世紀以降のイタリアの舞台芸術関連資料を調査)。 研究成果発表として、学会発表、研究論文投稿(日本語とイタリア語)を行う。とりわけ、論文投稿を積極的に行うことが重要な課題である。
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Research Products
(4 results)