2018 Fiscal Year Annual Research Report
Curvature Perturbations and Primordial Black Hole Formation in the Inflationary Universe
Project/Area Number |
18J01992
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
多田 祐一郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | インフレーション / ストカスティック形式 / 原始ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続きインフレーションに対するストカスティック形式を主題の1つとして研究を行った。ストカスティック形式ではインフレーション中のスカラー場のゆらぎをブラウン運動として取り入れるが、ブラウン運動の微分不可な特性からスカラー場間の共変性が崩れることに気づき、前年度所属のパリ IAP に再出張し論文にまとめ、CQG Letter に採択された[1]。その後 NCTS の北本氏により、量子論とストカスティック形式の対応に際し、タドポール図を正しく取り入れることで共変性を回復できることが、スローロール近似の下で示された[1811.01830]。現在これを近似を使わない形式に拡張すべく研究中である。 またストカスティック形式を応用し、インフレーションによる曲率ゆらぎを非摂動的に解析する手法を数値計算ツールとして実装し学会発表した[国内 3]。現在これを公開コードとして発表する準備を行っている。 もう1つの課題である原始ブラックホール (PBH) に関しては、同じく名古屋大学所属の横山助教とともに研究を行い、学会でも発表した[国内 4, 国外 2]。PBH の動機として我々は、暗黒物質、LIGO の重力波検出、OGLE による自由惑星の重力レンズ現象の発見の3つに注目し、インフレーションを複数段階に分けることでこれらを同時に説明する PBH 質量スペクトルを実現できることを示した。こうした複数段階インフレーションは、最近発表された string swampland conjecture [1810.05506] からも支持されることを指摘している。これらの結果を論文として発表する準備の途中である。 最後に同研究室学生の阿部氏とは、振動するスカラー場の重力崩壊現象について研究を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りストカスティック形式における数値計算コードは完成し、あとは論文にまとめ発表するだけである。また PBH 形成に関しても新たな模型を提唱することができた [1904.10298]。 計算コードの非ガウス性への拡張については、1点相関の完全な確率分布関数を求めるアルゴリズムは Vennin 博士の協力のもと理解できてはいるが、高次相関についてはまだ議論途中である。総合しておおむね予定通りに研究が進んだと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず上記数値計算コードの発表を急ぐ。その後そのコードを様々なインフレーション模型に適用し、その有用性を証明していく。一方 PBH に関して、LIGO/VIRGO の重力波直接観測の成功に伴い、PBH 形成模型の副産的重力波の観測可能性も期待され、そうした重力波と生成 PBH 量の正確な関連付けの重要性が上がってきている。しかし PBH 量の予言にはいまだ不定性が多い。最近ピーク理論を用いて正確に PBH 量を予言する形式が提唱されたが [1805.03946]、これは PBH 質量が広範に渡る場合に対しては適用できない。そこでこうした問題を解決し広く模型に適用できる正確な PBH 量見積もり手法を提唱していきたい。
|
Research Products
(10 results)