2018 Fiscal Year Annual Research Report
無道管広葉樹の特異的あて材から読み解く樹体支持・通水機能の進化プロセス
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18J02105
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
相蘇 春菜 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 木材加工・特性研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 支持機能 / 通水機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
苗木の調達と生育、そして仮道管の通水機能の樹種による違いを明らかにすることを目標として実験に取り組んだ。イチョウ、スギ、センリョウ、ヤマグルマ及びポプラの苗木を調達し、組織観察が十分に可能な状態であったスギとセンリョウについて、ホルモン塗布と傾斜処理を実施した。センリョウは1株あたりの幹を8本にそろえたもの、スギ苗木は12個体を準備し、人工気象室で生育させた。樹幹に塗布する植物ホルモンは1-ナフタレン酢酸とジベレリン酸とし、ラノリンにそれぞれ溶解することでペーストを調製し、樹皮の上から樹幹に塗布した。対照として、ラノリンのみのペーストも調製した。センリョウは1株ごとに、スギは各処理を4個体ごとに実施した。さらに、傾斜刺激に対する影響を調べるために、各処理の半数を傾斜・固定し(傾斜試料とする)、残りの半数を鉛直方向に固定した(鉛直試料とする)。傾斜・固定後、それぞれの処理の半数の幹は、染料注入処理し、その後、立木凍結固定し試料を採取した。残りの幹は、樹体支持機能の評価のためにペースト塗布部の表面成長応力解放ひずみを測定した後、この部位を採取した。木部中の通水機能は、立木染色した試料の組織観察と表面解放ひずみ測定後の試料の木口面の面積あたりの透水係数を測定することで評価した。 実験の結果、センリョウ、スギともにジベレリン酸処理した傾斜試料の下側で大きな圧縮の表面成長応力の発生が認められた。また、立木染色後の木部は、センリョウ、スギともにジベレリン酸処理した傾斜試料の下側の形成層付近で染色が弱かった。一方、透水係数はジベレリン酸処理により減少し、その変化のパターンはセンリョウ、スギで一致した。従って、樹幹へのジベレリン酸と傾斜処理、これら2つを組み合わせた処理後の樹幹の表面成長応力、通水経路と透水能力はセンリョウとスギで類似する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
市場での流通量が少ない樹種を対象としているため、苗木の調達に時間を要する結果となった。また、苗木の生育状況の点から、現在も生育を継続している樹種もある。これらの理由から、自己評価を(3)やや遅れている、とした。しかし、昨年度に得られた結果は、今後の実験手法の改善点を明白にした。このことは、今年度の実験精度の高度化に貢献できると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、昨年度は、当初の計画通りに実験を進めることが困難であった。このことに対応するために、また、昨年度の実験の結果を踏まえて、今年度は、すでに苗畑や林地に傾斜して生育している樹種(スギ、イチョウ、ポプラ、ヤマグルマ、センリョウ等)を実験の対象とすることとした。対象樹種の生育場所と個体の選定はすでに進めており、数種についてはサンプリングする個体を決定している。 仮道管の樹体支持と通水の機能の調査を進めるが、対象とする個体のサイズが大きくなることが予想されるため、特に、樹体支持機能評価のための物性試験をより正確に実施できることが期待される。通水機能は、仮道管内腔の水の存在の有無と通水経路を調査することで明らかにする。
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Research Products
(3 results)