2019 Fiscal Year Annual Research Report
DLBCLの周囲微小環境による予後決定メカニズムの解明と新規治療標的の探索
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18J02214
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
宮脇 恒太 久留米大学, 久留米大学医学部病理学講座, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 / DLBCL / 免疫微小環境 / 予後層別化モデル / 新規治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の研究対象で或びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)は、最も頻度の高く、かつ予後の不良なリンパ腫である。DLBCLに対する標準治療であるR-CHOPは、DLBCL患者の生命予後を著しく改善したが、R-CHOP後に再発した約4割の患者の予後は惨憺たるものであり、DLBCL患者にとって、R-CHOPの恩恵を受けられるかどうかが運命の分かれ道と言っても過言ではない。したがって、どの患者がR-CHOPの恩恵を享受できるのか、を精確に予測できる予後層別化モデルの重要性が増している。そこで我々は、①日常診療に還元が可能なDLBCLの新規層別化モデルの開発をすることを目的に研究を行い、さらに②微小環境による予後規定メカニズムを明らかにし、③R-CHOPの恩恵を受けられない患者に対する治療戦略を開発することを目指し、研究を行った。 ①については2018年度においてほぼ目標を達成し、DLBCLの微小環境因子による予後層別化の基礎となるデータを蓄積することに成功した。②については、主に2019年度に微小環境因子による予後モデルの確立し、現在は実用化に向けての研究を進めている。同時に、画像解析やシングルセル解析などの新規技術を用いてDLBCLの微小環境をより高い解像度で観察することで、微小環境による予後規定メカニズムを明らかにした。また、最終年度は新たな治療標的戦略確立のために、新規治療ターゲットの同定とその治療開発について研究を進捗させる。 以上の通り本研究は、診断時点で、既存の治療で十分に治癒が見込める患者群を抽出するのに有用な層別化モデルを提供すると同時に、既存の治療で治癒が望めない患者に対する新たな治療戦略を提案する意味で、DLBCL診療に大きく資するものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度には、DLBCLに対する標準治療であるR-CHOPならびにそれに準ずる治療を受けた患者サンプル(Training cohort 170症例、validation cohort 80症例の計250症例の初発時生検検体由来のRNA)を対象とした遺伝子発現解析により、予後良好を規定する遺伝子として、濾胞性T細胞やマクロファージ、間質細胞関連の遺伝子を同定した。 年次計画における2年目の研究計画は、“新たな予後層別化モデルの検証と確立”であった。上記の3系統の微小環境細胞関連遺伝子のうち最も予後を規定する統計学的パワーの強い遺伝子を選定し、それらの発現パターンによる予後層別化モデルを作製した(DLBCL Microenvironment Signature Score, DMS score)。サブセット解析においてDMS scoreは、既存の予後層別化モデルである、The International Prognostic Index (IPI)やLymph2Cxと独立した予後因子であることが証明された。また、DMS scoreはvalidation cohortにおいても強力に予後を層別化しており、これらの結果から、DMS scoreがDLBCLの微小環境シグニチャーに基づく新規の予後モデルであることが示された。上記の結果を研究成果としてまとめ、現在論文投稿中である。併せて、DLBCLの予後を規定する上記遺伝子セットとして、国際特許を申請・取得した。 また、3年目の計画内容である“新規治療標的分子の同定と評価”についても、研究を進めている。上記のnCounterによる多症例の遺伝子発現解析データより、予後不良因子を抽出し、そのうち治療標的になりうる遺伝子を選定した。現在はこの標的に対する治療薬開発を目指して研究を推進しており、次項にて概説する。
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Strategy for Future Research Activity |
多数症例の臨床検体を用いたスクリーニングによって同定された予後不良因子の一つであるMYCは、既にDLBCLの強力な予後不良因子と広く認識されており、MYCの遺伝子変異や異常発現を認めるMYC関連DLBCLは現在の標準治療に対して著しく予後不良であり、その治療戦略開発が大きな課題となっている。MYCは、小分子の標的領域が存在しないことや制御している下流遺伝子があまりに多いため(副作用発現に対する懸念)に、直接治療標的とすることが難しいことが近年報告されている。そこで、我々はMYCによって発現を制御され、より増殖という細胞動態に直接的に影響する遺伝子Xに注目している。英国のLifeArc社のDebbie Taylor氏らとの共同研究により、現在Xの機能を阻害する小分子化合物のDLBCLの新規治療薬としての可能性を検討した。その結果、MYCがDLBCLにおいてXの発現を直接制御していること、またこの阻害剤がDLBCL、なかでもMYC関連DLBCL、に対して治療効果があることをin vitro, in vivoモデルで示すことに成功しつつある。これらの成果を検証し、治療薬としての開発や論文投稿を目指す。
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Research Products
(8 results)