2018 Fiscal Year Annual Research Report
加齢造血幹細胞におけるメタロチオネイン遺伝子の機能解明
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18J10037
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Research Institution | Chiba University |
Research Fellow |
栗林 和華子 千葉大学, 大学院医学薬学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢造血幹細胞 (Aged HSC)特異的に高発現している遺伝子としてMt1, Mt2を同定し、これらの遺伝子が加齢に伴う造血幹細胞の機能変化にどのような役割を担っているのかを調べている。 第1に、Mt1/Mt2ダブルノックアウトマウス (Mt1/Mt2 DKO)をC57BL6Jマウス (コントロール)と共に1年間飼育し、4ヶ月毎に末梢血液のフローサイトメトリー解析を実施した。末梢血細胞では変化が見られず、1年齢の骨髄細胞についても有意な差は見られなかった。第2に、Mt1/Mt2 DKOマウスを用いて競合移植と二次移植を3度実施したが、コントロールと比較して有意な差が見られなかった。第3に、Mt1,Mt2を発現誘導するレンチウイルスを感染させた造血幹細胞を、致死量放射線照射したマウスに3度移植し解析を行なったが、有意な結果は得られなかった。今までのところMt1, Mt2の造血幹細胞機能への影響は認められていない。Aged HSC特異的に高発現している遺伝子としてMt1, Mt2以外にも候補があり、これら候補遺伝子の機能解析を進めている。 第4の実験として、Mt1, Mt2を含むAged HSC特異的な遺伝子発現に骨髄ニッチが影響を与えていることを調べている。Aged HSCを前処置なしに骨髄移植を行い生着したAged HSCのRNAシークエンスを実施した結果、若齢骨髄ニッチに生着したAged HSCの遺伝子発現プロファイルが、Aged HSCよりも若齢造血幹細胞の遺伝子発現プロファイルへ回復していた。この結果は、Aged HSCの遺伝子発現の変化は、加齢に伴うニッチの形質変化に起因する可能性を示している。現在、Mt1, Mt2を含むAged HSC特異的な発現を呈する候補遺伝子が、若齢骨髄ニッチに生着したAged HSCにおいてどのような役割を担っているのか解析を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Aged HSC特異的な遺伝子に着目して第1から第3の実験を実施したが、Mt1, Mt2の造血幹細胞機能への影響を認める結果を得ることができなかった。しかし、このような自体を想定して同時並行でMt1, Mt2以外にAged HSC特異的に高発現している候補遺伝子の機能解析を進めている。そのため、Aged HSC特異的な遺伝子が加齢に伴う造血幹細胞の機能変化に与える影響を調べるという目的を果たすための実験は継続できている。 また第4の実験として、造血幹細胞に影響を与える骨髄ニッチ環境に着目した実験を新たに開始している。今年度実施した解析において、Aged HSCの遺伝子発現の変化は、加齢に伴うニッチの形質変化に起因する可能性を示す重要な結果を得ている。この結果を起点に、Mt1, Mt2を含むAged HSC特異的な発現を呈する候補遺伝子が、Aged HSCと骨髄ニッチ環境へ与える影響を解析することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度で実施した解析において、若齢骨髄ニッチに生着したAged HSCの遺伝子発現プロファイルが、Aged HSCよりも若齢造血幹細胞の遺伝子発現プロファイルへ回復したという結果を得た。このような遺伝子プロファイル変化の原因として、Aged HSC特異的な遺伝子のDNAメチル化による遺伝子発現抑制が疑われた。そこで、Reduced Representation Bisulfite SequencingによるDNAメチル化解析を実施することを予定している。また、中間齢マウスとDNAメチル化阻害剤を用いて、実際にDNAメチル化がAged HSC特異的な遺伝子の骨髄ニッチ環境変化に伴う遺伝子発現変動に関与しているかを検討する。それに加えて、無処置移植されたAged HSCがレシピエントの骨髄組織のどこに分布しているのか調べるために、GFPやクサビラオレンジで蛍光標識されたAged HSCを無処置移植して解析を行うことを計画している。これらの実験と今までの解析結果をまとめた上で、平成31年度中の論文投稿を予定している。
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Research Products
(2 results)