2018 Fiscal Year Annual Research Report
ドストエフスキー後期作品とロシア正教聖者伝・教訓文学
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18J10112
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋須 直人 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ロシア文学 / ドストエフスキー / 聖者伝・教訓文学 / 土壌主義 / ザドンスクのチーホン / 古儀式派 / コンスタンチン・ゴールボフ / キリスト教的自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は4月下旬から7月初めにかけて、ロシア・サンクトペテルブルクに資料収集に行った。書店や博物館、学会イベントにおいてここ数年に出版された新しいドストエフスキーの研究書を手に入れるとともに、サンクトペテルブルグの国際図書館において、帰一派に移った元古儀式派の聖職者パーヴェル・プルスキーとその弟子ゴールボフについて書かれた1868年の『ロシア報知』誌7月号、8月号に所収の記事をコピーした。この記事はドストエフスキーが関心を持って読んでいた。これらをもとに、ブルガリア・ドストエフスキー協会主催のシンポジウムで、ドストエフスキーの長編『悪霊』創作過程における「自由」の概念とゴールボフとの関係についての内容を含む、学会発表を行った。この成果を元にした論文はほぼ完成させており、近いうちにロシアのドストエフスキー研究雑誌に投稿する予定である。 また、4月下旬には聖チーホン学会という、18世紀のロシアの聖人ザドンスクのチーホンの名前を冠した学会において、ザドンスクのチーホンとドストエフスキーについての発表を行うとともに、多くの神学者、宗教家、ロシア正教徒と交流をし、ザドンスクのチーホンについての重要な資料を手に入れた。ロシア文学を専攻しつつ、宗教的テーマを研究しているため、文学研究者のみならず神学者や宗教家からのアドバイスを必要としており、そのための貴重な知り合いができた。ここで発表した成果を含む論文をロシアの人文系学術雑誌『学問的対話』に投稿し、採録が決定した。 これとは別に聖人ザドンスクのチーホンと『悪霊』についてのロシア語論文がロシア国立人文大学の紀要「新文献学報」(Web of Science Core CollectionやERIN PLUSに登録されている)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに計画していた学会発表、資料収集を計画通りに遂行し、研究成果を複数の論文にまとめることができたため。ただし、夏に資料収集し、秋に学会発表した古儀式派とドストエフスキーについての研究を年度内に論文化できなかったため、(2)の評価区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の初めに、1年目で資料収集し、学会発表したゴールボフとドストエフスキーについての論文を完成させ、ロシアのドストエフスキー研究の雑誌に投稿する予定である。 6月に東京大学で行われる第10回スラブ・ユーラシア研究東アジア大会で、申請者が組織した二つの共同パネルにおいて、一つは発表者として、もう一つは司会者として参加することが決定している。これらのパネルでは留学先の大学で共に学んだ若手中国人研究者たちが中心となり領域横断的な議論を行う(大衆文化研究者、現代文学研究者、演劇研究者、教育学者、言語学者)。今後、ドストエフスキー研究のコミュニティに留まらず、広く東欧研究をしている研究者や、他のヨーロッパ文学の研究者に対しても成果発表をしていく予定であり、ここでの発表をそのための足掛かりにしたい。 また、本年度は最後の年度であるため、年度内の博士論文完成を目指し、これまでの研究成果をまとめていく予定である。
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Research Products
(7 results)